4.自己プレゼンテーションに必要な考え方か」「顧客のことを考えているか」「しっかり成果(利益)を考えて行動できるか」「失敗を恐れず挑戦しつづけている」といった問いに応えるような人物であるかということである。 技術者の採用では,直ちに新卒学生に成果をだすことを期待していない。むしろ,将来(できるだけ近い将来が望ましい)に成果を出す人材,会社を牽引できる人材となる可能性を持つ「人物」であるかを見たいのである。さらにその先には組織のマネージャーやリーダーとしての成長が期待される。 「ものづくり」が好きで大学校に入学し,「せっかく,今学んでいる技術があるのだからそれを活かした仕事につきたい」という説明をする学生がみられる。まさに自分が得意なことや好きなこと興味があることを思うままに応募書類に記述しているケースである。これは,せいぜい会社を希望するに至る「きっかけ」を自分の立場だけで説明したにすぎないのだが,このことに全く気が付いていない。 活発に活動をするがなかなか内定を得られない学生は,このような志望動機を引用し,応募を続けている場合がほとんどである。 自分の価値観のみに立脚した志望動機は応募先の企業が変わっても変わらない(応募先が変わっても同じ志望動機を使い続けることになる)。 同じ型にはめた志望理由で行動した場合,「柔軟な情報収集」「多面的な評価」ができなくなり,「思考が停止」した状態になってしまう。 そのため,面接での想定外の質問に対応できないことになってしまうと筆者は考えている。 筆者はまず,この考え方のギャップを埋めることからはじめる(学生側の考え方を企業側の考え方に合わせる)。そのために学生がこれまで採用試験で提出した応募書類の内容の確認をする。「やりたいことがあるか」「現場の仲間とうまくやれるか」「顧客のことを考えているか」「しっかり成果(利益)を考えて行動できるか」といった内容を確認するた-21-めの質問を複数してみる。 思考が停止状態の学生にとっては,これらの質問は意外な質問に感じられるようである。当然のことながら,答えられないか答えても抽象的な回答しかできない。 はじめは何故,そんなことを聞いてくるのかという逆質問をする学生もいる。 しかし,そこは思考が動き出すところであり,何故だと思うかと考えさせるようにしている(対象,状況にもよるが)。 このやりとりを経て,応募書類を確認し,質問の答えが具体的に説明されているかを確認していく。 説明がない場合は説明の記載を指示し,希望する職種と擦り合わせた事例や目標の設定を行う。 記載の際に紙面の関係で記入できないと訴える学生もいるが,表現方法を変えることで記載が可能であることを具体的な例示をして説明をする。 少しでも記述があれば,それを意識するが,記述そのものがないと準備を失念するリスクを負うことになる。 自分を売り込むためには相手の求めているものを理解して相手の立場で理解されるような説明のシナリオを準備をすることが必要である。 この説明のシナリオを応募書類にまとめ,次に面接対策を行う。自分のことを相手に説明するのは難しいことであるり,不十分な説明で終わっていることが多い。 アメリカの文化人類学者であるエドワード.T.ホール(Edward T.Hall)の「ハイ・コンテクスト文化とロー・コンテクスト文化」という考え方がこの問題をとらえる参考になる。 ものづくり企業はグローバル化が進展しており,海外市場での取引の割合を増やしている。 海外に工場をもつ企業は,現地での採用を積極的に行う企業が多い。そして採用市場への影響とし実践報告3.2 学生側の考え方3.3 考え方の擦り合わせ4.1 人材採用市場のグローバル化
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