大学校及び設置科 沖縄職業能力開発大学校 電気技術科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 安全衛生工学、電気電子計測、電磁気学、電気回路、電気設備、電気設備実習
課題に取り組む推奨段階 電気回路、電気設備、電気設備実習、電磁気学を習得後
課題によって養成する知識、技能・技術

課題を通して、発電原理、発電に関与する因子とその設計法を身につける。

製作の目的と概要

本課題は、高価なため各家庭には普及していない小型風力発電機について、部品点数を抑えることによる低価格化と製作後の発電機性能の特性評価を目的として製作に取り組みました。18年度にコイルと磁石の形状が発電量に及ぼす影響を調査済みであることから、これをもとに現状で最も多くの電力を取り出せると思われるコイルと磁石の形状の組み合わせで製作を行いました。希薄なエネルギーを電力に変換する発電機については、従来は規定された(日本電気学会 JEC-114等)回転数または周波数での特性を計測し評価してきた発電機がほとんどです。言い換えれば限定された定格範囲内での効率は良くても、これを超えた回転数が高いときや低いときなどの発電量に問題がありました。つまり、あらゆる回転域の入出力特性を計測し評価しなければ、目的とするエネルギー変換の総合システムを構築するのは難しいと考えられます。また、400rpmを超える回転域では、ステータコイルの発熱により、コイルの支持材質である樹脂が溶解し、実験継続が困難となっていたため、その打開策を模索することになりました。本製作では以下の点を目標としました。

・シンプルな構造にすることによる低価格化
・各回転数における発電機特性計測・評価
・現時点でのステータの限界とそれを打破するための解決策の模索

成果

今回製作した発電機の構造、外観、及び発電機の仕様を図1に示します。発電機特性計測装置を使い、アキシャルコアレス型発電機を実機製作し計測したところ、コギングトルクによる回転ムラがなくスムーズに発電する特性を示し、風力発電及び希薄エネルギーをエネルギー変換するトランスデュサとしての活用に期待の持てる結果を得ることができました。
また、現在販売されている発電機に比較して、同回転数で他社を上回る発電量を記録しました。構造を簡単にすることによる低価格化にも成功し、価格は材料費だけではありますが(人件費は含みません)、5分の1以下に抑えることに成功するなど、当初の目標を達成できました。
また、実験を進めていく中で、コイル電線の電流容量付近まで通電すると、ステータの支持材質である樹脂はジュール熱(抵抗損)により溶解し始めることが確認されました。これについても対策策を見出すことに成功しましたが、現在、特許出願中であり、現時点では公にはできません(2007年3月14日出願済み)。
図2は、ステータコイルを配置し、樹脂により固めるところです。図3は発電機試験装置の外観で、周波数を変化させることにより、あらゆる回転域の発電機特性を計測することができます。図4はブレード(周速比6)を装着して、フィールド実験を行っているところです。
風力発電機の製作と特性計測(H19)の画像1
図1 発電機の構造・外観・仕様
風力発電機の製作と特性計測(H19)の画像2