大学校及び設置科 北海道職業能力開発大学校 建築施工システム技術科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 環境工学、環境工学実験、建築設備、建築材料、木造施工、断熱施工、安全衛生
課題に取り組む推奨段階 木質構造施工・施工管理課題実習終了後
課題によって養成する知識、技能・技術

課題を通して、主に問題解決型の製品開発プロセス、環境デザイン技法、実験計画法及び技術報告書の作製技術の実践力を身につける。

製作の目的と概要

 本開発では、融解温度を任意に設定できる潜熱型蓄熱材料(PCM)を混和した内装材を作製し、毛細管暖冷房マット(CTM)と組み合わせて施工する「ハイブリッド壁暖冷房システム」の製作をテーマとしました。このシステムで用いる内装材は、石膏ボードなどの一般的な内装材に比べて蓄熱能力が高く、日射を暖房用エネルギーとして活用し室温の日変動を抑制して室内の温熱的快適性を向上させることを可能にします。また、熱媒は水ですから雪氷やバイオマスエネルギー、地熱などの低未利用エネルギーの活用も期待できます。
 開発したシステムの基本的熱性能を検証するために、恒温恒湿実験室における性能確認実験に加えて、北方型の高断熱・高気密住宅を想定した実験棟に開発したシステムを施工し、冬季の室温変動と蓄熱性能を測定しました。さらに、測定結果をシミュレーションの結果と比較して評価することで、システムの室温変動抑制効果の実証を試みました。

成果

 実証試験の結果、開発した潜熱型内装材の蓄熱性能は石膏ボードの7倍程度であり、夏季昼間の温度上昇を5℃、冬季夜間の温度下降を2.5℃抑制できることが確認されました。また、この内装材料はボード状に加工できるだけでなく湿式施工が可能で、内装材として必要な曲げ・圧縮強度を保持していることが分かりました。暖冷房システムのプロトタイプを用いた性能試験では、システムの暖冷房能力が同定され、暖房停止後にも潜熱蓄熱による放熱が継続することが確認されました。さらに、室の熱容量に集中定数系仮定を用いた室温変動予測法により、建物の実効的な熱容量を室温変動の測定値から予測する方法を開発しました。熱容量が温度の関数で表される本システムのコンピュータによる数値計算結果を測定値と比較したところ、計算結果は精度良く現象を追跡できることが確認されました。
潜熱蓄熱内装材によるハイブリッド壁暖冷房システムの開発−その1 潜熱蓄熱材の内装材への適用範囲および室温変動抑制効果の検討−(H19)の画像1
写真1 プロトタイプ
潜熱蓄熱内装材によるハイブリッド壁暖冷房システムの開発−その1 潜熱蓄熱材の内装材への適用範囲および室温変動抑制効果の検討−(H19)の画像2
写真2 システム実証試験棟