大学校及び設置科 近畿職業能力開発大学校 建築施工システム技術科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 安全衛生管理実習、創造的開発技法、木質構造施工・施工管理課題実習、基礎構造物設計実習、施工実験、応用構造力学、建築生産情報処理実習
課題に取り組む推奨段階 安全衛生管理実習、創造的開発技法、木質構造施工・施工管理課題実習、基礎構造物設計実習、施工実験、応用構造力学、建築生産情報処理実習 終了後
課題によって養成する知識、技能・技術

課題を通して、既存木造住宅の耐震診断方法に対する知識及び技術、また耐力壁の製作及び実験を通じての根拠、耐震化技術を身につけます。

製作の目的と概要

 阪神淡路大震災の発生から13年。被災を契機に成立した耐震改修促進法に基づく耐震改修計画の策定が市町村でほとんど進んでいません。国土交通省の調査(2007年9月1日現在)によると、1,827ある市区町村のうち計画を策定しているのは、わずか3%に当たる56自治体にとどまっています。特に、ここ近畿地方においては、東海・東南海・南海地震などの発生確率が高く危険性が指摘されています。また、「住生活基本法」により、4つの柱が示され、良質な住宅ストック形成に向けて動き出しました。2004年には、新しい耐震診断法の開発がなされ、多くの補強方法が提案されています。そこで、今回は既存木造住宅(1981年以前)の耐震診断により、従来の使い勝手を維持しながら耐震の改修提案を行うことを目的としました。
 全体としての作業の流れの概略は、以下の通りです。

・既存木造住宅(和歌山県紀の川市野上、昭和37年新築、木造瓦葺平屋建、束立玉石基礎)
?診断方法 → 一般診断法
?地盤調査 → スウェーデン式サウンディング試験
?開口部補強形式による耐力壁試験
?耐震改修計画の提案

成果

1.スウェーデン式サウンディング試験による地盤調査
地盤状況による既存住宅への影響を考慮し、外周3カ所において、スウェーデン式サウンディング試験を行いました。3カ所とも長期許容支持力が50kN/?以上の結果を得ました。

2.既存住宅の一般耐震診断法
既存住宅は、小屋裏及び床下に入ることができず、壁内部の調査ができないこと、住人が生活をしていること等により、破壊調査ができないため一般診断法を適用しました。
(応用課題では、想定軸組等の基準耐力と要素基準剛性を設定し、精密診断も併用した)
結果は、上部構造評価0.7未満(倒壊する可能性が高い)でありました。(表1)

3.開口部補強形式による耐力試験
束立玉石基礎であるため、足固め補強を伴う開口部補強形式による耐力壁の開発としました。まず、現状の垂れ壁モデルの実験により、基準耐力と要素基準剛性の把握をし、足固め補強3タイプを作成し、耐力壁実験を行いました。その結果より、耐震診断を行い、上部構造評価1.0以上をめざしました。結果として、足固め補強のみでは満足できず、炭素繊維ラミネート補強利用による添え半柱のタイプとなりました。(写真1)

4.耐震改修計画の提案
上部構造評価が1.0を越えることを目標として、6補強パターンを考案しました。?開口補強、?壁増設+開口補強、?屋根軽量+壁増設+開口補強 の3パターンを使用することにより、従来の使い勝手を維持しながらの耐震改修の提案としました。(表2)
既存木造住宅の耐震診断及び補強提案(H19)の画像1
写真1 現状タイプ及び垂れ壁足固め補強タイプの実験風景
既存木造住宅の耐震診断及び補強提案(H19)の画像2
表1 一般診断結果(現状)
既存木造住宅の耐震診断及び補強提案(H19)の画像3
表2 補強パターン診断例