大学校及び設置科 北海道職業能力開発大学校 建築科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 安全衛生、鉄筋コンクリート施工、鉄骨造、測定、材料、力学、設計・製図
課題に取り組む推奨段階 建築構造力学、建築材料、鉄筋コンクリート構造、鉄骨造、建築構造設計及び建築施工実習終了後
課題によって養成する知識、技能・技術

課題を通して、主に鉄筋コンクリート設計及び鉄筋コンクリート施工技術の実践力を身に付けます。

製作の目的と概要

 鉄筋コンクリート建物が地震時に大きな外力を担うと、コンクリートひび割れ面相互の3次元接触から、この面に沿ったせん断・垂直変位(ひび割れ幅)とこれに応答するせん断・垂直応力が惹起されます。この機構の知見は、鉄筋コンクリート構造物の耐震性能の評価に不可欠にもかかわらず、これまで境界条件が満足された資料は皆無のようです。
 本課題では、この境界条件を満足する実験を行うために、写真1の加力システムを試験体サイズに合わせて極力コンパクトに設計し、剛に全溶接しました。写真2のせん断試験体に発生させるひび割れ面積を75mm×100mmに定め、鋼製キャップを試験体に装着し加力フレームに組み込む前に、その隙間へ無収縮セメントペーストを流し込み一体化させています。
 コンクリートひび割れ面の位置(ひび割れ幅)を保持することが求められますので、PID自動制御理論を適用し、写真1の4本の機械式ジャッキシステムに自動制御ソフトを組込んで、ひび割れ形成からせん断実験までの一連の動作を制御しました。
 本課題では、新たな計測・加力・制御システムを構築し、コンクリートひび割れ面のせん断応力伝達機構を明らかにすることをその目的としています。

成果

 成果としては、これまでにない高精度・高性能の計測・制御・加力システムが構築できたことです。ひび割れ面を正確に3次元位置制御するには、少なくとも3軸(3本のジャッキ)以上が必要ですが、本システムでは、4軸の自動制御化に成功しています。
 この自動加力システムを用いて、コンクリートひび割れ面の「片振幅、両振幅、接触率一定」の3シリーズの実験を行いました。従来、ひび割れ幅一定が満足された例は殆どありませんでしたが、これに4軸自動制御が不可欠であることを明らかにしました。ひび割れ面の応力伝達機構は複雑であり、わずかな条件の相違、例えば、ひび割れ凹凸の程度やコンクリート強度の影響を受けるようです。さらに、ひび割れ面でせん断軟化現象が起きていることが初めて計測されています。
コンクリートひび割れ面のせん断応力伝達実験(H20)の画像1
写真1 加力システム
コンクリートひび割れ面のせん断応力伝達実験(H20)の画像2
写真2 せん断試験体
コンクリートひび割れ面のせん断応力伝達実験(H20)の画像3
図1 片振幅実験結果