大学校及び設置科 職業能力開発総合大学校 小平キャンパス 生産システム技術系共同開発
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 ◆機械:機械設計、機構設計、加工、シーケンサ、精密計測 ◆電子:マイコン制御、回路設計・製作、センシング、圧電素子 ◆情報:画像処理、データ通信、データ処理
課題に取り組む推奨段階 応用課程2年次
課題によって養成する知識、技能・技術

◆機械:自動化機器設計製作、精密測定 ◆電子:計測制御、自動化制御 ◆情報:画像解析、データ処理 ◆各科共通:創造性・協調性を包含したコンセプチャルスキル、ヒューマンスキル

製作の目的と概要

ボールねじ、ボールベアリング等のボールを用いた要素部品は、直接摺動させる場合に比べて摩擦抵抗が低減され効率が大きく改善されます。しかしながら、精密部品であるため製造、検査の工程などにおいて熟練技能による計測や人間の感応的な評価に頼りがちです。
本開発において取り上げたボールねじは、ボールがナットと軸の間に組み込まれています。このすきまが大きいと精密な位置決めが困難になり、逆に締めしろが大きいと摩擦抵抗が大きくなり装置の効率、寿命を低下させます。
このため、高精度ねじの生産ラインにおいてはボール径が1μm単位で異なるボールを10数種類用意し、最初に組み込んだボールの作動感覚により組み込むべきボールを判断するという選択嵌合を行っています。このラインの自動化を行うには、μm単位の測定を必要とするねじ軸有効径とナット有効径を自動で測定し、適合するボールを選択する計測手法の開発が必要になります。

成果

ボールねじの有効径とは、図1、図2で示すようにボールを溝部(ゴシックアーチ形状)に入れた時のボールの中心から反対側のボールの中心までのことです(ねじ軸側、ナット側共)。このねじ軸側とナット側の有効径の差により組み込むべきボールが選定されます。昨年に引き続き以下の2つの方法に取り組みました。
 ? ボールねじのねじ軸の有効径を画像処理および画像解析により測定し、ナット内径の有効径を圧電素子による計測法により測定することにより二つの測定結果から適合するボールの選定を行う。
 ? ボールねじを組み立てた後ボールねじの軸方向のすきまを高精度に測定することにより適合するボールの選定を行う。
この結果、本年度は?の方法により実際の計測に用いることができる計測精度を得ることができました。
この結果、本年度は?の方法により実際の計測に用いることができる計測精度を得ることができました。この手法を用いることにより、ボールねじメーカーは感応評価に頼ることなく出荷するボール径を選定することができます(今回の選定手法で得たボール径はボールねじメーカーの技術者の感応評価でも高精度ボールねじの出荷基準を十分に満たしています)。
軸方向のすきま計測手法でボールねじの生産ラインにおける自動計測は可能ですが、実際にねじ軸長さの異なる各種ボールねじへの対応を考えた場合、計測に対するねじ軸の重量の影響、装置の大型化や、自動化のコストの増大などが考えられます。
これに対し、計測装置の構造面からは、軸直角方向のすきま測定を行えば、ねじ軸長さの影響が少なく、構造的にも簡単になり、コストも低く抑えられます。このため、構造を変えて軸直角方向のすきま計測装置を製作しました。
ボールねじ等の自動計測システムの開発(H22)の画像1
図1 ボールねじ断面図
ボールねじ等の自動計測システムの開発(H22)の画像2
図2 ゴシックアーチ形状