大学校及び設置科 職業能力開発総合大学校 小平キャンパス 電子情報技術科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 コンピュータ工学実習、電子回路設計製作実習、電子機器組立て実習(集中実習)、組込み機器製作実習
課題に取り組む推奨段階 電子回路設計製作実習終了後
課題によって養成する知識、技能・技術

課題を通して、プリント基板回路設計、電子CAD操作および表面実装部品を使用した製作技術に関する実践力を身に付けます。

製作の目的と概要

iPod®やWALKMAN®などのディジタルオーディオプレーヤーは老若男女問わず、大変人気があります。これらのプレーヤーには組込み技術が使われています。組込み技術とは、特定の機能を実現するために家電製品や機械等に組み込まれるコンピュータシステムのことです。この技術をマスターするためには、ハードウェアとソフトウェアの両方の幅広い知識とものづくり技能の習得が必要で、労力を伴います。そのため、学生の興味・関心や学習意欲を向上・持続させるために、MP3(MPEG Audio Layer-3)オーディオプレーヤーの製作を総合制作実習の課題に選びました。
本課題は平成20年度から実施しており、年々改良を加えています。昨年度までのものはACアダプターが必要でしたが、本年度では単三電池で動作できるように改良し、プリント基板も極力小型化して、携帯可能とすることを目標にしました。また、プレーヤーのケースについては、産業デザイン科1年生にプレーヤーの仕様を説明して、21名の学生が若い自由な発想でケースをデザインし製作しました。

成果

今回、製作したMP3オーディオプレーヤーのプリント基板を図1に、産業デザイン科の学生がデザインしたケースの一例を図2に示します。今年度、製作したMP3オーディオプレーヤーは昨年度のものと比較して、以下の改良を行いました。
1) プリント基板のサイズは約20%縮小しました。
2) DC/DCコンバータ回路を実装したことにより、単三電池2個で5V系回路を駆動することができました。
3) 昨年度の高価なMP3モジュールを廃し、MP3 ICを利用したローコスト化と高密度実装を実現しました。
4) 今回製作したMP3プレーヤーと昨年度製作したものとの周波数特性を測定しました。音源は日本オーディオ協会が制作した「AUDIO TEST CD-1」の20Hzから12.5kHzまでの12段階の正弦波信号ファイルをMP3形式に変換し、SDカードに記録して2つのMP3プレーヤーで再生しました。オーディオ出力信号をHP社のオーディオアナライザー8903Bで測定しました。図3の利得の相対評価[%]とは、1kHzの出力信号値を100とした時の他の周波数の信号値の割合を表したものです。図3の測定の結果より、昨年度の高価なMP3モジュールを使用したものと比較して遜色ない特性結果を得ました。

 今回の総合制作実習を通して、学生は組込み技術などのテクニカルスキルを習得できただけなく、産業デザイン科とのコラボレーションにより企業の製品開発で行われているエンジニアと工業デザイナーとの共同開発の疑似体験することができました。積極性や責任感及びコミュニケーション能力などのヒューマンスキルが向上するなど、学生の大きな成長が観察されました。
MP3オーディオプレーヤーの製作―PartⅢ 産業デザイン科とのコラボレーションによる携帯型への展開―(H22)の画像1
図1 設計したMP3プリント基板
MP3オーディオプレーヤーの製作―PartⅢ 産業デザイン科とのコラボレーションによる携帯型への展開―(H22)の画像2
図2 産業デザイン科の学生が製作したデジカメ風ケース
MP3オーディオプレーヤーの製作―PartⅢ 産業デザイン科とのコラボレーションによる携帯型への展開―(H22)の画像3
図3 音響周波数特性試験結果