大学校及び設置科 関東職業能力開発大学校 建築科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 構造力学、材料実験、構造実験、木質構造の設計、施工、安全衛生
課題に取り組む推奨段階 構造力学、材料実験終了後
課題によって養成する知識、技能・技術

木質厚密分野において最先端の知識を得るとともに、前例のない課題への取り組み手法と開発手法を習得する

製作の目的と概要

日本には四季があり、その四季によって春材と秋材ができ、木材の年輪が構成されます。年輪の傾角によってヤング率などに大きな影響を及ぼします。木材の高強度化の手法の1つに圧密技術があります。これはスギのような軟質針葉樹材を横圧縮変形して細密化し、その変形を永久固定化することで得られる材料であり、高密度材とほぼ同等の材料特性を有しています。本制作では、横圧縮時の形状変形特性を、年輪傾角と細胞形状から考察し、加工精度の高い圧密技術の確立を目指します。得られる成果は、フローリング、腰壁材を初めとした各種加工技術への応用が期待されます。木質材料工場にこの技術を用いた場合、材料の無駄、加工力の低減によるコスト削減、製品の均一性向上及び性能向上が可能となります。また、木質構造建築物においては、めり込み論への応用が期待され、その理論式への組み込み、計算式の信頼向上が可能となります。

成果

年輪傾角0度はヤング率が大きくエネルギー吸収に長けているため、めり込みの発生時には最も有効に働く傾角だと考えられます。しかし、実際には0度以外の繊維傾斜でめり込むことがあり、めり込みは設計値より実測値が小さいという現状があります。繊維傾斜によりヤング率が低くなることを考慮し、安全率として設計に加える必要があります。一方、ヤング率が最小の年輪傾角は、小さい荷重でも潰れやすく、圧縮加工の際には省エネルギーになります。また、縦横比が変わるとヤング率の最小をとる年輪傾角も変化するので、圧縮する際に木取りなど断面形状によって年輪傾角を変えることが有効であると分かりました。ただし、これは気乾状態の場合であり、軟化させる設備が整った場所では、年輪傾角と縦横比の影響は受けません。今回の成果は、めり込み論において安全率を見直す必要性と新たな安全率を定める際の参考になり得ます。また、圧密木材のような塑性加工を効果的に取り入れた技術の開発に貢献できると考えられます。
木材塑性加工(H22)の画像1
図1 横圧縮の一般的な応力とひずみの関係
木材塑性加工(H22)の画像2
図2 横圧縮によりエネルギーを吸収するモデル例
木材塑性加工(H22)の画像3
図3 年輪傾斜角と圧縮方向の関係