大学校及び設置科 近畿職業能力開発大学校 産業化学科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 有機化学、有機工業化学、有機化学実験?及び?、有機工業化学実験、応用機器分析実験?及び?
課題に取り組む推奨段階 専門課程2年
課題によって養成する知識、技能・技術

sulfonamideの合成法、単離精製法、機器分析法、有機化合物の構造決定法

製作の目的と概要

サルファ剤とは、p-aminobenzenesulfonamideの構造(p-H2N・C6H4・SO2NHR)を有する合成化学療法剤である。これまでに実用化されたサルファ剤のほとんどは、PABA(p-aminobenzoic acid)に相当するp-aminobenzenesulfonic acidとaromatic amine (R-NH2)が縮合した構造であるが、分子中にaromatic ringを含まないaliphatic sulfonamideの抗菌および抗真菌活性が報告されました。一方、銀や白金などの金属錯体の抗菌活性が注目されています。また、昨年の卒業研究(宮道班)によりaliphatic sulfonamideがrare metalとキレート化合物を作り易いことが発見され、rare metal の抽出薬としての応用が期待されます。
本テーマでは、従来のサルファ剤に見られるaromatic amineをaliphatic amineに替え、さらに金属イオンとキレート結合し易い、図1の化合物を含む27化合物をデザインして合成します。また別の班では金属とのキレート化合物が合成され、我々が合成した化合物、およびそのキレート化合物の抗菌活性が測定され抗菌剤としての可能性が評価されます。さらにrare metal の抽出に関する性能が宮道班により測定されます 。
★技能・技術習得目標:
合成するターゲット化合物に対する合成ルートの設定、反応における仕込み量の決定、反応条件の設定法、単離精製方法、具体的な操作方法、合成した化合物の構造決定法、等について習得します。

成果

最初に設定した27化合物の全てを合成することができました。抽出、再結晶・クロマトグラフィーなどによる混合物の分離精製、置換基の化学変換やFT-IR法による構造決定、互変異性体による混合物の生成、など高度な化学的現象や技術を総合的に習得させ、研究レベルの有機合成を体験させることができました。
 また、合成したsulfonamide誘導体およびキレート錯体には、ある程度の抗菌活性が認められたので、実習生達が協力してスルホンアミド類の抗菌活性発現の機構について議論することができました。
★アピールポイント:
本テーマにより、実習生達は医薬品探索研究のごく一部であるが、そのプロセスを総合的に理解することができたと思われます。さらに、実習生達は、医薬品開発に限らず、農薬、化粧品、染料、塗料、界面活性剤、食品添加物、香料、などファインケミカル工業会の新規有用化合物の開発に対する理解を深め、多少なりともそれに携わる心構えを身につけることができたと思われます。

※この課題情報シートには、学生が作成した予稿原稿が含まれています。
sulfonamide誘導体の合成(H23)の画像1
図1.合成のターゲット化合部1
sulfonamide誘導体の合成(H23)の画像2
図2.合成のターゲット化合部2
sulfonamide誘導体の合成(H23)の画像3
図3.合成のターゲット化合部3