大学校及び設置科 関東職業能力開発大学校 建築科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 木造建築物の基本的な設計、墨付けや加工技術
課題に取り組む推奨段階 専門課程2年
課題によって養成する知識、技能・技術

伝統的建造物の耐力要素の構法に対する理解を深めることができます。公的機関の耐力要素の評価方法を習得します。試験データ等を予稿集等にまとめることでき、文書として作業内容を残すことができます。

製作の目的と概要

 2012年7月12日に、栃木県栃木市嘉右衛門町は重要伝統的建造物群保存地区に選定された。これを機に、歴史的街並みの維持保全に努めていくことが重要な課題となっています。しかし2011年3月11日に発生した東日本大震災で、栃木市の多くの伝統建造物に何らかの損傷が確認されました。栃木市仕様土塗り壁における力学的特性を検証する目的で研究を行っています。
 過去に行われた同様の試験にて、栃木市仕様の土塗り壁を復元した土塗り壁(以下、初期壁と略記)にタッカー留めと縄止めを施し、比較試験をおこないました。その結果、両者とも建築基準法で定められている告示の条件を満たしていましたが、タッカー針留めは小舞竹の損傷が激しく、補修には不向きであることが分かりました。
 本研究では、初期壁のうち縄留めを施した試験体を補修したもので行うこととしました。そこで、栃木市仕様土塗り壁の補修効果の検討、または見世蔵などでみられる大壁の構造特性を把握し、耐震基準との比較を行いました。


★技能・技術習得目標:
 在来軸組工法の基本的な設計、墨付けや加工ができます。
耐力要素の評価に使用する試験機器を操作することができます。
試験データを論文等の形式にまとめることができ、かつ、発表することができます。

成果

本総合制作実習を通して以下の成果を得ることができました。
1)過去に被害を受けた耐力要素の補修した結果、最大耐力はほぼ同程度の性能を得ることができましたが、基準剛性は低い数値となりました。壁倍率については同程度となり、さらに建築基準法の土塗壁の倍率を上回る結果となりました。
2)耐力要素の評価実験を通して、試験機器の操作法補ならびに壁倍率用の評価方法を習得することができました。
3)栃木仕様の耐力要素の構法等を習得することが来ました。

★アピールポイント:
本総合制作実習は、とちぎ蔵の街職人塾からの依頼を受けて、関東職業能力共同研究の一環として行いました。
 その過程で、小山工業高等専門学校および東京都市大学と共同で実験を行いました。この一連の研究結果については、栃木市へ栃木市の伝統的建造物の仕様として提出し、地震災害等の復旧作業時に活用していただき、街並みの復旧および維持管理に活用していただく予定です。従って、当該研究に参加した学生は、社会的に有意義な
経験をしたと思います。
栃木市仕様土塗り壁の補修効果に関する研究(H25)の画像1
図1 軸組のみの試験状況
栃木市仕様土塗り壁の補修効果に関する研究(H25)の画像2
図2 補修壁の最終破壊状況
栃木市仕様土塗り壁の補修効果に関する研究(H25)の画像3
図3 土蔵用大壁の最終破壊形状