大学校及び設置科 九州職業能力開発大学校 建築科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 建築施工実習?、構造力学?、建築構造実験
課題に取り組む推奨段階 在来軸組架構施工技術習得後
課題によって養成する知識、技能・技術

伝統工法、鎌継手、引張強さ、性能確認試験、終局耐力

製作の目的と概要

  日本の伝統的木造建築物の技術は、これまでの経験と勘から生まれ、そして職人から職人へと継承されてきました。しかしながら今日木造建築物に用いられる技術は、古来より伝承されてきたものからすると簡略化されたものもあり、複雑な継手・仕口は書籍などで確認できるものの殆ど過去のものとなっています。特に、現在の継手・仕口の加工は、主に工場での機械加工がなされており、受け継がれることも非常に困難となってきています。
  そこで本課題では、伝統的木造建築物の継手・仕口の中から現在も土台や梁などに用いられる鎌継手を取り上げその変遷と強度を調べることとしました。

成果

 木造建築物の継手・仕口の種類は使用箇所によって様々であり、また形状や寸法も地域あるいは職人間で異なることが多く見られます。本課題では現在でもよく使用される鎌継手を取り上げ、その継手の変遷の調査を行ないました。ここで、鎌継手の形状の変化は大きく分けて3種類あり、年代別に古代鎌、中世鎌、近世鎌となります。
 なお、形状や寸法等については近隣の古建築に携わっている業者から充分な調査を行ない、決定しました。
 それら3つの継手の構造性能を把握するために、引張試験を行ないました。その結果、古代鎌から近世鎌へ移るにつれ引張体力等の向上が見られ、時代を経て継手が完成していく様子が理解できました。また今回の課題では、材種および梁せいを1種類のみでおこなったため、それらが引張強度にどのような影響を及ぼすか解明できていません。これらについては、今後様々なパターンで定量的に実験を行なっていくこととします。
伝統的木造住宅における継手の変遷とその強度(H18)の画像1
写真1 古代鎌継手 
伝統的木造住宅における継手の変遷とその強度(H18)の画像2
図1 中世鎌継手 荷重-変位曲線