大学校及び設置科 近畿職業能力開発大学校 建築施工システム技術科
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 木質構造施工・施工管理課題実習、内装施工実習、施工実験
課題に取り組む推奨段階 応用課程2年
課題によって養成する知識、技能・技術

木造住宅施工技術、木造住宅施工管理技術

製作の目的と概要

 木造の伝統工法は、古くから継承されてきた日本固有の文化です。ところが、時代の変化に伴い、その施工件数は激減し、廃れていく一途を辿っています。しかしながら、古くから伝えられる「大工技能」は、これからの木造建築にも必要不可欠であり、伝統工法は途絶えさせることなく技能伝承することが求められます。
本課題は、実際に伝統工法を用いた模擬家屋製作を通じ、伝統工法の良さを実証し、このまま途絶えることなく技能伝承させることを目指します。また、伝統工法のひとつの特徴である『石場立て基礎』について、振動実験を行い、伝統工法の弱点といわれる耐震性能を確認します。
★技能・技術習得目標:
 古くから伝承されている大工技能についての知識を習得し、建築大工の技能伝承問題を考察します。また、振動台を用いた振動実験を行い、建物の耐震性能に関する分析手法を習得します。

成果

 床面積約13.7?(3,700mm×3,700mm)の平屋建て伝統的工法住宅を、実際に施工しました。主な仕様として、構造部材どうしの取り合いを、釘・補強金物を使用しない木組みとし、壁は伝統工法の最大の特徴である土壁仕上げとしました。施工後、施工および施工管理のポイントを整理し、「施工要領書」としてまとめ、伝統的工法の特徴(長所と短所)を施工者側と施工管理者側の立場で分析しました。振動実験については、半畳(950mm×950mm)サイズの試験体(材寸は1/1スケール)を作成し、振動台に固定した石場建て基礎に乗せ、BCJ波・兵庫県南部地震・三陸沖地震・東北地方太平洋沖地震の4種類の地震波により、地震後の柱のずれを測定しました。
★アピールポイント:
 施工面やコスト面において、伝統工法が衰退していく原因をいくつか認める事もできましたが、環境面でのメリットや、木材の良さを前面に表すことのできる工法が「伝統工法」に存在することも確認できました。
ユーザーの多種多様なニーズにおいては、最新工法も伝統工法も共存することができます。石場建て工法は、地面と緊結しないため、地震による建物のズレが発生しますが、基礎から柱が脱落するような大きなズレにはならないことと、ズレる事により地盤の揺れを建物へ直接伝えない『免震性能』を持つことも確認できました。
木造伝統的工法の良さとは  ?石場建て工法の施工性と免震性能の検証?(H26)の画像1
図1 上棟の風景(丸太)
木造伝統的工法の良さとは  ?石場建て工法の施工性と免震性能の検証?(H26)の画像2
図2 製作した家屋
木造伝統的工法の良さとは  ?石場建て工法の施工性と免震性能の検証?(H26)の画像3
図3 石場建て振動実験