大学校及び設置科 九州職業能力開発大学校 生産システム技術系共同開発
課題実習の前提となる科目または知識、技能・技術 機械技術(機械設計、機械加工、自動化機器)、電気・電子技術(シーケンス制御、位置決め回路設計技術)
課題に取り組む推奨段階 機械技術(応用課程1年次の技術内容を習得後)
課題によって養成する知識、技能・技術

自動機の開発を通して、設計、製作及び組立・調整等の総合的な実践力を身に付ける

製作の目的と概要

 溶接は、作業者の経験や技量が、製品の良し悪しに与える影響が大きい作業の一つであることもあり、企業では作業者自らが行っている溶接を専用機械やロボットに行わせる自動化を進められています。しかし、溶接作業によっては、完全に自動化することが困難なものもあり、熟練作業者に依存せざるを得ない場合もあります。しかしながら、溶接という仕事が3K職種であることや近年の若年労働者の減少、さらに熟練労働者として働いている作業者の高齢化などにより、多くの企業が従来どおりの溶接品質を確保することが困難と考えているようです。
 そこで、一般作業者が高付加価値製品のものつくりに対応できる手法として作業者と機械の協調溶接作業を考え、両者の協調によるTIG溶接に関して検討を行ないました。
 ここでいう作業者と機械の協調溶接とは、作業者の優れる五感を介した制御能力と機械の優れる高速及び安定した運動を組み合わせた新しい考え方の溶接を指しています。
 製品の組立てに機械との協調による溶接を適用することで、技能レベルの高くない作業者でも高品質な溶接が期待できると考えます。

成果

 図1に協調TIG溶接システムを示します。本システムは、試作した三軸ポジショナと市販の溶接機、これらを制御する制御装置及びポジショナの動作パラメータ設定パソコンから構成されます。
 図2は溶接経験の少ない作業者(学生)と溶接指導員免許を有する作業者が行った協調溶接による十字継手管のビード外観の写真です。溶接経験の少ない作業者が行ったビードの外観写真は12回目の溶接のときのものですが、溶接中の電極やワイヤ狙いなどの複合的な操作が難しかったため、(b)及び(e)に示す箇所においてアンダカットが発生しました。
 しかし、溶接経験の少ない作業者でも、わずかな練習で写真に示すような品質の溶接が可能となったことから、本システムを利用する溶接の有効性が確認できました。
作業者と機械の協調によるTIG溶接の検討(H18)の画像1
図1 試作した協調溶接装置の外観
作業者と機械の協調によるTIG溶接の検討(H18)の画像2
図2 協調溶接による十字継手管のビード外観