平成29年度、当室の調査研究開発テーマのひとつは、「eラーニングを活用した高度な技能習得に係る調査検証事業」です。つい「当室の…」と書いてしまいましたが、正確には基盤整備センター開発部全室による合同プロジェクトという位置づけです。
平成28年度に実施した「ものづくり訓練におけるITの活用方策に関する調査・研究」に続く開発部プロジェクトです。
昨年の取組みでは、初心者を対象とした職業訓練の補助教材として
ペーパーテキストでは、2次元の静止画でしか表現されていないものを、IT教材化することで、より実物チックに見せ、リアルにイメージがつかめる、自学自習にも使えて、指導員が拡大表示用のプレゼンツールとしても使用できるものを目指しました。
写真1:断面図示モデルの例
さて本命というか本題。
今年のテーマ「eラーニングを活用した高度な技能習得に係る調査検証事業」は、平成28年度の成果に気を良くし、さらに発展型を目指すことになりました。
「匠・ベテラン」と称えられる、高度熟練者の技能・技術を構成する「独創的な思考プロセス、優れた段取り」を、IT教材化として記録し(形式知化する…と言うそうです)、多くの人々に活用していただく方法を検討します。
題材としては、ものづくり系の分野の中でも、より多くの技術要素に関連するプラスチック射出成形金型の設計製作技術を取上げることとしました。製品や金型の設計、加工技術、測定、表面処理、熱処理など、多くの技術に関連した「匠・ベテラン」の暗黙知を教材化できるものと期待しています。
教材開発にあたり、職業大をはじめとする7名の検討委員に、大田区を代表する金型製作会社をアドバイザーに加えて、これまで2回の検討委員会により教材内容を検討してきました。
写真2:検討委員会の様子
写真3:射出成形によるプラスチック製品群
写真4:製品研究
一連の検討の結果、教材の方向性が見えてきました。
『某金型製作会社で、脱「新人」を目指す若手設計技術者が、新規のプラスチック製品受注を任され、社内のベテラン・先輩のアドバイスを受けながら、製品設計→金型設計→金型加工→テストショット→納品までと、悪戦苦闘する挫折と成長の物語を軸に、ツボな動画と解説コメントを、旬なUser Interface(SNS風)に乗せ、鼻歌みたいに学習できる教材』の方向で企画が進行中です。もちろん学習の進行に連動した用語解説や、折々登場するボスキャラとの戦い(確認テスト)など、eラーニング・テイストにも手抜かりはありません。
更に加えて、「製品設計→金型設計→金型加工→テストショット」という一連の設計製作工程は、当機構指導員にとってはブラックボックスともいえる分野です。この中には、金型製作に必要な知識(材料選択、金型形式の選択、製品単価や加工コストに直結するノウハウ、最適な射出条件の算出など)でありながら、機構指導員が学ぶ機会の少ない重要な情報が盛り込まれます。そのため射出成形分野を担当する若手指導員に対しても有用な教材となりそうです。
手前味噌ですが、教材の特色は『リアル!金型製作の現場』です。
上記一連の工程に関するノウハウを収録するため、本事業において実際に金型を発注し、予算に収まるように製品形状や金型形状などを、金型製作会社-基盤センター間で検討し、製品と金型の設計を行い、それに基づく金型の加工/製作からテストショットまでを含め、全ての工程を記録していきます。それらを通じて、金型設計/製作のポイントやキーワード、匠・ベテランのノウハウを抽出し教材化していこうと企画です。
このテーマは、平成30年度を含む2ヶ年の事業となります。
いずれまた、「最近のきばん」コーナーで教材製作の様子など、紹介していきたいと思います。
委員・関係者の皆様、今後ともご支援ご協力をよろしくお願いいたします。