• アビリティ浜松(静岡県立浜松技能開発専門校) 浅野 剛司

1.はじめに

本校は,機械技術の向上と技能者養成の目的で昭和13年に設立されました。当時の商工省が,予算80万円で全国に20ヵ所の機械工養成所を設立した施設のうちの1つであります。

開校以来55年の長い間に,1万2000人余の生徒を地域産業界に送り出したほか,4万8000人余に及ぶ在職者等の社会人に対して知識・技能講習を行い,地域産業の発展に寄与してきました。

この間,昭和20年には浜松大空襲を受けたり,昭和40年代の日本列島大改造に伴う,若年技能者不足により新設科ラッシュの飛躍的な発展をとげた時期もありましたが,近年の高学歴化社会の到来により社会は大きく様変わりし,本校の役割も,養成訓練から社会人訓練中心へとシフトするなど幾多の変遷を経て,今日ここに高度技術社会に対応できる新校舎の建設が実現できました。

2.整備事業の概要

2.1 全面改築の目的

地域の産業およびそこに働く人々のニーズに対応し,次のようなコンセプトにより社会人を対象とする職業訓練の拡充を主目的とし,小池町と初生町とに分かれていた2教場を統合して,浜松市小池町2444-1に整備いたしました。

  1. ① 社会人訓練の定員の拡充
  2. ② 技術の高度化に対処するため,新規学卒者訓練の見直しと在職者訓練の充実
  3. ③ 女性,中高年齢者のための訓練コースの充実
  4. ④ 民間が行う教育訓練に対し,情報提供や施設開放による支援の強化

2.2 全面改築の経緯

平成2年度,整備基本構想を策定し,これに基づき基本設計,平成3年度に実施設計を行い,平成4年11月に着工し,1年5ヵ月を要して平成6年3月竣工したものであります。

3.施設の概要

本館棟・東実習棟・西実習棟・多目的ホール棟の4施設が整備されました。

校舎全体は本館をメインに置きながら中庭を核にして,東西2棟の実習棟および多目的ホールが「ロの字形」に配置してあります。中庭は芝生となっており,その周囲にはモニュメント20基が設置されています。

本館
本館
中庭
中庭
実習棟
実習棟
多目的ホール
多目的ホール
中庭
中庭

柱頭モニュメントはすべて異なった形をしており,人間一人ひとりの個性を表したものです。「個性・独創性を伸ばすこと」が,これからの職業能力開発の考え方として重要であるとの観点から製作されました。

また,駐車場は約100台分のスペースを取っていますが,この半分は調整池兼用となっております。

敷地総面積は,2万1195㎡,建物延べ面積約1万1500㎡,グランド約4500㎡となっています。

3.1 本館

本館は,鉄筋コンクリート4階建て,間口約90m,奥行き最大26m,高さ最大25m,延べ面積約4700㎡です。

本館
本館

1階は,ロビーをはさんで東側に管理ゾーン,西側にコミュニティ室,展示コーナー,生徒ホール等の共用部分が配置してあります。

生徒ホール
生徒ホール

2階は,社会人教室・コミュニティ室・視聴覚室・建築CAD室など。

3階は,離転職者訓練教室・会議室・図書室など。

4階は,生徒教室・建築製図科実習室・共同製図室などとなっております。

特徴的な施設設備としては,

●講座案内装置

40インチ・29インチの親子テレビ・パソコンで構成しており,朝・昼・夕の3回に分けて当日分の講座名・時間・場所などを自動的に表示するものです。

●展示コーナー

大きさは縦約5m,横10m,床はフリーアクセスフロアとなっています。横方向に陳列ケースがあり,三相電源やコンプレッサ(2HP,ドライヤ付き)が設置してあります。

展示品は,生徒の実習作品やメカトロニクス科の空気圧シリンダを利用した手作り教材装置を展示し,実演できるようになっています。

●コミュニテイ室

中小企業等の教育訓練の場として開放する室となっており,設備としてはOHC装置(40インチテレビ)などがあります。

生徒ホール

生徒ホール
生徒ホール

半円・吹き抜けのユニークな設計となっており,訓練生等の昼食や憩いの場となっています。

テーブルは84席,テレビ,自動給茶機,自動販売機コーナーなどがあります。

3.2 実習棟

実習棟は鉄骨構造で,東西2棟からなっており,長さ85m,幅15m,高さ11m,延べ面積は5300㎡です。

実習棟
実習棟

東棟1階は,設備配管科,溶接科,金属成型科,造園科,2階は,電気工事科,メカトロニクス科。

西棟1階は,NC実習室,社会人機械科,機械科,機械技術科,2階は,広告デザイン科,社会人実習室,木工科,建築科,木工機械室となっています。

また,木工機械室から出る木屑は,実習棟北側の集塵機をへてサイロへ集められ,焼却炉で処理します。

3.3 多目的ホール

入校・修了式,技能祭,体育,社会人訓練,技能検定試験等に使用します。

構造は鉄骨造り,幅20m,長さ35m,高さ14m,面積700㎡,フロア面積約500㎡。

壁面には単相・三相電源コンセントを設けたほか,換気や照明にも留意しました。

3.4 その他

その他施設としては,敷地内に定員20人の浜技寮(延べ面積460㎡)があり,5年度に衛生設備等の改修工事を行いました。

4.設置訓練科の概要

●機械技術科 (普通課程 定員10人)

旋盤・フライス盤などを用いて切削技術を学んだ後,マシニングセンタ・NC旋盤のプログラムをパソコン技術を活用して学ばせます。

●建築科 (普通課程 定員10人)

木造建築の基礎を訓練の前半に学び,後半には木造住宅(約150㎡)1軒を請け負い,実力を身につけさせています。

●建築製図科 (普通課程 定員10人)

建築の基礎から建築士としての専門知識まで幅広く学ばせます。また,手書き製図はプロとして通用できる程度まで訓練するほか,CAD製図も併せて学ばせます。

●メカトロニクス科 新設 (普通課程 定員20人)

自動制御とNC工作機械を学ばせながら,実習教材を手作りしていくのが特徴です。

●機械科 (専修訓練課程 定員20人)

旋盤・フライス盤を中心に切削加工の基礎を学ばせます。

●金属成型科 (専修訓練課程 定員20人)

ガス・アークなどの溶接技能と板金加工の基礎を学ばせます。

●機械科 (離転職者訓練 年間定員25人)

随時入校方式であり,訓練はビデオによる自学自習方法を取り入れているのが特徴です。

●溶接科 (離転職者訓練 年間定員20人)

6ヵ月間で,ガス・アークなどの溶接技能と板金加工の基礎を学ばせます。

●電気工事科 (離転職者訓練 定員10人)

第2種電気工事士資格取得のための学科・実技を主に学ばせます。

●広告デザイン科 (離転職者訓練 定員20人)

レタリング・グラフィック・イラストデザインなどの基礎技能を学ばせます。

●造園科 (離転職者訓練 定員15人)

剪定などの庭園管理技能を現場実習を中心に学ばせるほか,校内で造園基本を学びます。

●情報ビジネス科

販売士,簿記およびパソコンの基本操作などを学ばせ,検定試験にチャレンジさせています。

●木工科 (離転職者訓練 定員15人)

木工機械の基本操作と木工製品の加工技能を学ばせます。

●建設・測量科 (離転職者訓練 定員10人)

土木構造物の建設に必要な測量の基礎知識・技能を学ばせます。

●設備配管科 新設 (離転職者訓練 定員10人)

給水・排水・衛生配管および空調の基礎を1年で学ばせます。

5.おわりに

静岡県の西部に位置しております本校は,浜松市を中心とする西部地域の職業能力開発の拠点として,地域の皆様に,「喜ばれ,信頼される」技能開発専門校を目指して,職員一同力を合わせて職務に専念する覚悟でございますので,関係各位の一層のご支援,ご協力を賜わりますようお願い申し上げまして,紹介を終わらせていただきます。

●次号予告●

次号は「職業訓練教材コンクール」を特集いたしますのでご期待ください。

「技能と技術」誌編集部

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