“パンフレット等を作成して職業能力開発施設のPR*の一助に”ということで,平成5年度の「広告と広告媒体の知識とその技術」という研修をさらに発展させ,人がものを買うメカニズムからサービスを提供するためのプレゼンテーションまでを,パンフレットの企画作成を中心に平成6年度に初めて設定したものです。
本研修は平成6年9月19日(月)から22日(木)までの4日間にわたって職業能力開発大学校,多目的・実習研修棟の501教室で行われました。
本研修コースは,研修員がPR活動を円滑に進めるために必要なビジュアル・コミュニケーション,創造性開発,パンフレットの制作技術,プレゼンテーションについての基礎知識を修得しました。
本研修は座学と演習・実習で進められ,この研修を受講した研修員からは,「職業能力開発施設の弱い部分の強化に,大変良い研修だった」「講師の方の豊富な経験と深い内容で,とてもためになった」などの感想が寄せられました。
本研修には,北は岩手から南は長崎までの全国の公共職業能力開発施設の塗装科,洋裁科,建築技術科,インテリア科,産業デザイン科,金属成形科,金属加工科等を担当している県立の職業能力開発施設,雇用促進事業団立の短大・職業能力開発促進センターの17名の方が受講されました。
研修員の方はPRの基礎を少しでも多く修得しようと,写真のように一生懸命にパンフレットの制作技術実習等に励んでいました。
ここで,PRの中で大切な項目を拾ってみると,魅力あるパンフレットを作成するほかに,相手のニーズを的確にキャッチすることも大きな要因です。
人が「欲しい」からサービスを買う・物を買うというのは,どういう状態なのでしょうか。
人があるものを「欲しい」と思うことは,その人に「あるもの」が不足している,欠けている,満足されていない状態にあるといえます。この満足され最も強い関心事項だけがお客に到達するない欲求を「ニーズ」と呼んでいます。
そして「ニーズ」が出てくるまでに,1つの予備的な段階が関心です。
関心とは1つの注意があることに集まり,時によっては,その人の行動を1つの方向に導くものです。
では,どうやって相手のニーズをつかむのか。
次にお客のニーズまたは問題解決に,サービス,商品がピッタリ適合していることを説明すること。
これを説得のプレゼンテーションといいますが,このため広報担当者として知らなければならないことは,
ここで究極の目標は,サービス・商品の説明を相手に完全に納得してもらうことです。
人は,自分が本当に納得するのは,自分の関心のある周辺のことなのです。したがって,説得の条件はまず,相手の関心を見抜き,ニーズを知り,問題のありかを理解することにあります。それにぴったりあった説得のプレゼンテーションをすればいいのです。
驚くべきことですが,このへんのことは今から約2000年も前に『史記』の著者,司馬遷が喝破しています。
「説得することがむずかしいのは,説き伏せることがむずかしいためではない。また,うまく説得の目的をはっきりさせることができないためでもない。ましてや,説得内容を思う存分しゃべる勇気の問題ではなおさらない。説得のむずかしさは,相手の心を見抜き,いかにして説得方法をそれに適合させうるかにある」。
本研修の講師は現在,会社の社長のかたわら大学の教授,イトーヨーカ堂,西武百貨店,セブン・イレブン等の研修を担当し,以前は東京オリンピックのデザイン関係に参画したり,サントリー宣伝部に在籍したこともある,部外の1人の講師で最後まで進めました。
次回の短期実践技術研修「パンフレットの企画作成」および「プレゼンテーション技法」にも指導を仰ぐ予定でいます。
(第三研修室 植木 重男)
*PR:Public relations の略。パブリック・リレーションズという言葉は1802年,アメリカ合衆国三代大統領,T・ジェファーソンが教書の中で使ったのが初めてとされ,わが国では広告,宣伝活動と同意義に使われることもあるが,この場合は公共職業能力開発施設が公衆の支持によって成り立ち,その関係を良好に保つこと。