北海道立札幌高等技術専門学院ブロック建築科では,現在40名の応募定数の中で,中学校卒業生20名,高卒者10名,職業転換者10名の合計40名の学生の指導に,4名の職員で技術指導に当たっております。新しい組積構法のRM構造建築物が日米共同研究で開発されたのを受けまして,能開大においてRM施工技術の専門二期研修を受講し,併せて組積用教材の作成に取り組みました。実際に模擬の実験用RM建築物を組積しながら教材作成に取り組みました。能開大の渡辺光良先生・三田紀行先生にご指導いただき『打込み目地構法薄目地組積マニュアル』をまとめることができました。そして光栄にも平成6年度職業訓練教材コンクールにおいて労働大臣表彰入選と栄誉ある賞をいただきました。
社会状況の変化は,職業訓練科目も変えさせている現状にあります。建築系職種においても,生産性が向上しコンピュータによる工場生産,建築資材のプレカット,ユニット化等進歩しており,熟練技能者が不要のようにも錯覚する状況にあります。しかし,情報・ハイテク社会においても各職種の高度の専門化は必要であり,それらに共存できる技能者像を考える時期にあると思います。
そのような観点から,RM組積マニュアルは『墨だし・組積・型枠・鉄筋・コンクリート打設』などの一連作業としました。そのことにより十分な基礎技術力と複合技術の理解,そして実践技術の習得が可能であります。
RMユニットコンクリート製品の12型と23型の中から,23型(片開型)ユニット使用での作業工程にしました。組積の墨だし・縦やり方では,打込み目地構法簿目地工法(目地幅2.5mm)による,ボンディングパターンによる割付墨だし,縦やり方設置を行います。
鉄筋は,組積する前に格子状に鉄筋をセットし(現場組立),それを組み込むように組積していく方法で,工事の合理化や簡素化,品質管理等に有効な先組み筋(プリセット工法)による施工としました。
①床スラブの型枠代わり兼構造体として小型PCユニットを組積,組積後ユニット中央空洞部には高張力ボルトを挿入し,締め付け後にグラウトモルタルを流し込み製作しました。
集成パネル板を使用した合成スラブ工法による施工作業です。
②床用小型PC板の敷設方向は,スラブ短辺方向300ピッチに架けて,型枠支保工横架材上に敷設します。その上に所要の配筋を行った後に場所打ちコンクリートを打設して一体化します。
合成床スラブ上での下端筋配筋間隔は,短辺方向床用小型PC板敷設間隔30cmの配筋となり,上筋からの吊り筋で拘束するようになります(長辺方向には,配筋されない)。スラブ上端筋の間隔は,長辺・短辺方向それぞれ15cm間隔に配筋され,端部は周辺耐力壁内に定着します。
RM構造壁体は階高充填工法によるグラウト充填を行います。原則としてレディーミックスコンクリート製品とします。材料の搬入から,打込み方法・手順・床コンクリート打設・天端均し・清掃作業を行います。
コンクリート打込み後5日間は散水その他の方法で温潤にし(散水養生),日光の直射および寒気に対し適当な養生を行い(シート養生),打込みコンクリートが十分硬化するまで,振動・衝撃・荷重など与えないように注意します。
図5により一連の実験作業を行い,RM構造打込み目地構法組積作業のワンサイクル工程の訓練が可能となりました。新工法のRMユニット設計図による実技訓練指導を導入実施していきたいと思います。
近年の著しい技術革新の進展のなかで,建築施工の分野においても,技能者の高度情報化に対する養成が求められてきております。
私たちは,企業が望む技能者の養成のために絶えず社会情勢を把握しながら,訓練内容の高度化を図るとともに,今後,関係者の意見や指導をいただき,時代の変化に対応した新しい技術に関わる,わかりやすい教材の研究をすすめ,よりよい教材作成に当たってまいりたいと思います。