認定職業訓練制度とは,「事業主等が,その雇用する労働者に対して行う教育訓練のうち,職業能力開発促進法に定める基準に従って行われる訓練であって,事業主等の申請により県知事が認定する制度」です。
その結果,事業主等・団体の行う「教育訓練の質的水準を確保し,その社会的評価を確立することと各種の援助や助成を行い,企業の職業能力開発を支援して,労働者の育成とその職業生活の安定および社会的経済的地位の向上を図ること」を目的としています。
認定訓練施設は運営主体として単独の事業所と事業所の団体等に分けられます。
図1は平成6年3月の資料によるものですが,全国で1,390校あり,団体等で実施している訓練施設の方が事業所で実施している訓練施設より約2.6倍も多いことになっています。
それぞれの業種別をみてみますと,事業所では製造業に関連した科を持つ訓練校が多く,団体のそれは建設業(建築,板金,配管,電気工事,左官,造園等)関連業種が圧倒的な数を占めています。
また,事業所・団体ともに製造業では縫製関係,サービス業では理・美容関係の訓練科目が多くなっています。
愛知県は,平成6年12月現在で事業所で実施している認定訓練施設が43校,団体等の認定訓練施設は47校で,合計90校あります。
名古屋市南区にあった名古屋高等技術専門校は,平成5年4月北区に移転にあたり,「地域に開かれた職業能力開発の総合センター」をめざして,公共職業能力開発体制を充実させるとともに,企業や団体等に対しても各種の職業能力開発に関する情報(ADDS設置)提供や指導援助機能を受け持つ開発援助課を設置しました。
開発援助課は名古屋市と周辺の一部地域の生涯能力開発給付金等の受付事務も行いますが,指導・援助機能,情報・サービス機能,また調査・研究機能は県下全域を対象としています。そしてその実践の1つに「事業主・団体等の教育訓練の推進や企業自ら実施する教育体制の評価が得られるよう援助・整備等で支援する」認定職業訓練促進業務があります。
具体的には,
認定職業訓練の実施促進指導の方法として,①事業所または団体に対して巡回指導を行う。②団体構成事業所を集めて集団指導を実施する。③県の実施する諸会議等を利用して行う。などがありますが,これらを参考に開発援助課では県職業能力開発課で策定された「認定職業訓練促進要領」に基づき,年度を四半期に分け,そのつど計画を立て事業所・団体等を指導してきました。そこで,今回は巡回指導で実施した内容をその経過に従って述べることとします。
図2は平成7年1月までの巡回指導と来校指導の状況を表したものですが,まず,訪問事業所・団体等を選定します。その方法は,
そのほか,認定職業訓練を実施している施設で認定事項の変更が生じたときなども巡回指導や来校指導を実施します。
巡回指導にあたって開発援助課では,訪問目的を明瞭かつ円滑に進めるために認定職業訓練制度をわかりやすく説明したパンフレット『パワーアップ企業』を作成し,活用しています。
また,県職業能力開発課の職業能力開発行政を紹介した小冊子の『あいちの職業能力開発』も効果的な資料であり,ほかに本校の事業概要や各種給付金制度のパンフレット,公的職業能力開発施設の講習案内等を持参して状況に応じて説明することになります。
そして,訪問予定の事業所・団体と事前連絡をとり,訪問日程を協議します。また,そのとき実施している訓練内容や対象者,期間など大まかな情報もつかみ,その内容に即した訓練課程や科,コースなどの訓練基準に関する資料を整えます。
巡回訪問は事業所・団体等の教育や人事などの実質的な企画担当者とか社員研修の実務責任者の方,あるいは職業能力開発推進者等に面会して,そこで実施されている教育訓練の内容をさらに細部にわたり説明を受けます。
提供された資料や内容からその教育訓練の職業訓練体系での位置づけを判断し,種々の条件が職業能力開発促進法の基準に無理なく適合し,さらに継続性の有無など認定要件に即しているかどうかを当てはめてみます。
いろいろな角度で条件が整い,問題がなければ認定職業訓練制度を説明する中で,従業員にとってプラスになり,企業活動にとってもメリットになることを説いて認定申請を勧奨することになります。
前述のように認定職業訓練促進業務を巡回指導援助計画に従って指導を実施しますが,巡回指導と来校指導を終えるごとに,
等の項目に分類し,「認定職業訓練促進指導巡回(来校)実施結果報告書」を作成します。
そして,指導結果を記録して四半期ごとに県職業能力開発課へ報告します。
平成5年度は新規で認定職業訓練を受けた事業所・団体は5ヵ所,すでに認定訓練を実施している施設で増設等の指導に当たったところが9ヵ所ありました。
また,平成7年1月現在新規の普通職業訓練・短期課程の認定申請書提出ずみが1団体2事業所で,申請予定が2団体と2事業所(うち技能士コース1)となっています。既実施認定施設では普通課程で1団体,短期課程で1事業所の科増設申請があり,1団体の科増設申請予定もあります。
昭和56年度,国の職業訓練基本計画(第3次)は「生涯訓練体制の整備」として,“民間の活力の発揮による職業能力開発の積極的推進”があげられ,第4次(昭61)には「企業内職業能力開発の促進」,第5次(平3)にはそれに加えて公共部門における職業能力開発の「総合センターとしての機能強化」をうたっています。
名古屋高等技術専門校では,その趣旨に沿って,訓練施設,レイアウトを地域の環境にも反映させ,広範な訓練課程や地元のニーズに対応した在職労働対象訓練等の開講など,公共施設の特性を生かした職業能力開発を効果的に実施しています。
開発援助課業務も歩き始めて間もないながらも,その一端を担い,県下の事業所内教育訓練や認定職業訓練実施事業所等の問題や要望に応えるべく,種々の調査や制度等の研究を行い,指導や援助が効率的に機能されるような体制を徐々に整える必要があるかと思います。また,各方面の関係機関や組織との具体的な連携についても,手探りしながら広げていく方向にあると思われます。
表1は,開発援助課での民間企業への援助,相談件数をまとめたものです。
取り扱う相談内容では,生涯能力開発給付金制度に係る受付事務等の割合が特に高くなっています。
名古屋校開発援助課で受け付けた平成6年度の事業内職業能力開発計画届の受付件数が576件(平5508件)で,支給申請書提出の実事業所数が668社,とあり,支給予定総額がおよそ6億5,500万円と民間企業の職業能力開発支援業務内容として,重要な位置づけにあります。
今後,公共職業能力開発施設の業務の中で,事業所・団体等実施の職業能力開発への支援援助は,認定職業訓練促進業務など制度等の利用に関するさまざまな形で行われていくことと思います。