• ポリテクカレッジ宮城(宮城職業能力開発短期大学校)居住システム系住居環境科  星野 政博

1.はじめに

全国各地域で「町づくり・町おこし」事業の試みが盛んになされている。住みよい居住環境を創出するためには,各種の建築物を単体としてとらえるだけではなく,町並みや周辺環境全体を含めた,環境トータルな視点から考えていくことが必要である。

本稿では,環境計画論の講義・卒業研究として取り組んだテーマおよび研究テーマ(建築史・まちづくり等)を通じて実践してきた環境計画論の立場・視点からの考察を試みることとする。

2.環境計画論の目的および方法

住みよい居住環境を創出するためには,われわれ周囲の社会的・地域的環境を含めた視点からの考察が必要である。

そのため,環境計画論においては,都市計画・地域整備計画・町並み保存計画といった外部居住環境構成の理論および手法の概要についての調査・考察・企画・提案を実践するものとする。

3.環境計画の要素

「環境」という用語は,本来非常に大きな範囲を総合的に包含するものである。ここで提示する「環境計画の要素(表1参照)」は,都市環境の中で関わりが多いと考えられる項目を列記したものである。

表1
表1

なお,都市計画上で多く用いられる「景観・地域・場所等を示す用語」を表2に記した。

表2
表2

4.環境計画の視点(項目のみ列記)

  1. ① 町並み景観を意識すること。
  2. ② 歴史的遺産を活用すること。
  3. ③ メディアによる地域住民意識の高揚を図ること。
  4. ④ 「町づくりワークショップ」を提案すること。

5.築館町内に残る歴史的建築物に関する考察

建築計画系卒業研究との関連の中で,ここ数年来,築館町内に残る歴史的建築物に関する調査・考察を実践している(1994年度も継続中:参考資料1)。

参考資料1
参考資料1

昨年度(1994年),築館町役場庁舎の新築が決定し,現存する木造2階建庁舎(明治34年建造)が解体されることとなった。学生たちと卒業研究のテーマ設定に関して検討する中で,復元模型製作のための調査を実施し,記録として残すこととした。以下に,まとめの文章を示す。

『築館町役場保存のための復元模型製作』より

(1994年度卒業研究:横山元樹君)

【今回卒業研究として,築館町役場の復元模型製作を進めた。建物内部の実測調査を実施した際には,町役場職員の方々にご協力いただきました。どうもありがとうございました。実際には,建設当初の姿を知る資料は少なく,推定で進めざるを得なかったが,増築改修等の痕跡が見られ規模的にはほぼ当初の形態に復元できたと考えている。今回の調査を通じ,建築物を見る視点が変わり,現代の建築物とは違った建物の良さみたいなものを感じ取ることができた。調査を進めるうちに,町役場に親しみを覚え,取り壊されてしまうことは非常に残念に思えたが,記録として残すことによって,後世に伝えることができれば,それは価値あるものととらえている。】

6.築館町『杉薬師の里づくり建設審議会』への参加

1995年7月より,築館町役場跡地の活用計画のための審議会がスタートした。どのような形で現役場庁舎を残していけるか未定であるが,地域に残る近代建築を見直すことで,住民にとっての伝統再認識,自分の生まれ育った町を再評価していくことにつながると考えている(参考資料2)。

参考資料2
参考資料2

近代建築を残す理由として,文化財的な価値を見いだすとともに,景観の構成要素としてのランドマーク・連続性等の位置づけ,さらには,地域の歴史が育んできた文化の累積,地域の資源としての有効活用等の側面も大切にすべきであると考えるからである。

7.古川市まちづくり委員会への参加

1993年3月より,宮城県古川市のまちづくり委員会に参加し,種々のイベントや企画に加わらせていただいている。

住みよい居住環境を求めていくには,その地域住民が,自分自身で意識を高めていくことが大切であると考えているが,ベッドタウン化しつつある宮城県古川市においても,近隣の他市町村からの人口の流入・移動が多く,現在の人口は約8万人にまで増加している。

その状況の中で,古川市民約200名参加のまちづくり委員会が発足した。「委員会の正式名称は,『生き活きまちづくり210人委員会』,(中略)委員はテーマごとに7つの部会に属して活動し,随時,市長に提言を行う」とされている(1993.3.8(月)付け.河北新報による)。

私自身は,ふれあい部会の中の文化分科会に所属し,これまで,毎月1回の定例部会および不定期の打ち合わせ会,さらに移動分科会(古川市民会館の現状調査.1993年10月)・生き活きまちづくりみんなでトークシンポジウム(1994年2月)・古川市文化財の調査見学・学習会(1994年3月)等の活動に参加してきた。

1994年6月に実施した,イベント企画「緒絶川を語ろう会」(参考資料3)においては,企画・進行・記録を担当させていただく中で,多くの情報・知人を得た。緒絶川周辺の住民・古老・商店街・清流会等の人々からのお話を伺う中から,古川の歴史・文化・伝統を見いだし,地元市民のまちづくり意識の高揚を促進するイベント企画である。

参考資料3
参考資料3

古川市内にも歴史的環境の保存を計るべき地域町並みがあり,1995年12月には,緒絶川210プロジェクトという形で提言をまとめ,市長へ提出した。

現在,第2期(1期2年間)4年目の活動に入り,古川市民約150名が参加し,各種の分科会ごとの構成で,市行政への提言を目標に活動を進めているところである。

8.おわりに

歴史的環境の保存活用を通じた『まちづくり』という試みは,地域振興の一方法であると考えている。

「まちづくりは人づくり」であると言われるが,自分自身がいろいろな経験をする中で,まちの歴史について知り,話し合い,仲間が増え,まちづくりの気運の高まりを感じていく中で,地域に少しでも貢献できれば,非常に貴重な体験であると考えている。また,外に出かけて行くことにより,より広いネットワークが形成していけるとも考えている。

〈参考文献〉

  1. 1) 星野政博:「環境計画論の視点」宮城職業能力開発短期大学校紀要第8号,pp.29-39.1994年.
  2. 2) 星野政博:1994年度実践教育研究発表会講演予稿集,pp.197-198.
  3. 3) 星野政博:1995年度実践教育研究発表会講演予稿集,pp.187-188.
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