今,FAの世界では「製造原価の低減」「多様化に対応した生産性の向上」「効率運営」等を実現するためにFA生産システムの現場において,FA機器間のデータ送受信が重要な要素となっています。なかでもシステムを構成するコンピュータ,コントローラ,コンポネントが各階層ごとにしっかり結びつき,データのやりとりを密にすることでトータルなネットワーク化を図っています。このような背景からFAデータ通信技術とFA-LANの高度化技術を中心にプログラマブルコントローラ(以下「PLC」という。)の通信技術の修得を図るということで,データ通信の概要からトラブルシューティングまでを,短期実践技術研修として平成7年度に初めて設定しました。

本研修は平成7年11月27日(月)から12月1日(金)までの5日間にわたって職業能力開発大学校多目的・実習研修棟で行われました。

本研修コースは,研修員がPLCの通信技術を円滑に進めるために必要なデータ通信技術を表1のようなカリキュラムで実施しました。

表1
表1

本研修は,かなり先端的内容が実・学一体で進められましたが,この研修を受講した研修員からは,「PLCの通信のセミナーを実施するうえで大変に参考になった」「日常の授業を展開するうえで,すぐに役立ててみたい」,また「PLC通信の基礎がいかに大切なのかを教えてもらって感謝している」などの感想が寄せられました。

本研修には,全国の雇用促進事業団立の職業能力開発短期大学校,職業能力開発促進センターの方々が受講されました。

(1) リモートI/Oシステム

リモートI/Oシステム通信は,関連ユニットを使用することにより,遠隔操作や分散制御および制御盤間の省配線が可能になる通信システムです。写真2はその構成であり,図2はシステム図です。

写真2
写真2

(2) 上位リンク

パソコン(上位コンピュータ)側からRS232Cを使用して,システム構成しているPLC関連システム全体をべ一シックやC言語によって稼動状況の監視や指示が行えるシステムで,図3はそのシステム構成図です。

図3
図3

(3) シスマクリンク

PLCの補助リレーエリアやデータメモリエリアを使用して,プログラムレスでデータのやり取りをリアルタイムで行い,PC間,さらにPCとパソコン間のデータの共有化ができ,データ通信が高速に行えるシステムで,図4はそのシステム構成図を表します。

図4
図4

(4) シスネット

シスネットは工場内FA-LANを構築するためのあらゆる情報の効率的なデータ通信ネットワークで,FAコンピュータ,PLCでの双方向通信を実現するとともに,生産計画,資材・出荷等を統括管理をします。図5はそのシステム構成図を表します。

図5
図5

(5) イーサネットシステム

情報系,セルコンピュータと接続したいときや,複数社のFAコンピュータと接続したいとき,FAパソコンをパソコンLAN接続したいとき,移植製の高いLANアプリケーションを開発したいとき等,制御系(PLC)と情報系を結び,大規模なFA用ネットワークシステムを構築します。図6はそのシステム構成図を表します。

図6
図6

(6) 遠隔保全(リモートメンテナンス)

写真3は設備機器から,PLCの接点・情報を取り組み信号入力の都度,ポケットベルや電話等登録された通報先に対して,電話回線により自動通報を行ってメンテナンスを実施するシステムです。図7はリモートメンテナンス構成図を表します。

図7
図7
写真3
写真3

(7) MEネット(豊田ネットワーク方式)

図8は設備制御に用いられるPLCロボット,NC装置,パソコン等の各種FA機器を接続し,異メーカ,異機種間のネットワーク化を図るものです。

図8
図8

以上について,先端的な座学と演習・実習で研修が進められました。

平成8年度の短期実践技術研修「プログラマブルコントローラの通信技術」は平成8年11月25日(月)~29日(金)の日程でさらに改善して実施する予定です。

第四開発研究室 本田 雅夫

第三研修室 植木 重男

図2
図2
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