• 福祉系の能力開発 2
  • 香川県立高松高等技術学校 介護サービス科  東条 暎子

1.はじめに

高齢化が全国より10年程度早く進んでいるといわれている香川県においては,今後,介護を必要とする人の増加が見込まれ,ホームヘルパー等の福祉サービス従事者の人材育成が必要になると予測されている。高齢化社会に対処するために立てられた香川県保健福祉計画の中においても,表1のように特別養護老人ホーム等の介護職員の需要の大幅な増加を見込んでいる。また,同計画策定の段階で,医療側からも,介護職員を増やすことは病院での看護婦等の人手不足の解消になるし,技術を身につけた介護職員は必要であるとの意見も得ていた。

表1
表1

このようなことから,高松高等技術学校では平成5年度に,商業事務科を廃止し,介護サービス科を新設した。その当時,私は県の他の部局で保健婦の仕事をしていたが,科の新設とともに指導員として着任した。最初は何もかも初めてのことで,試行錯誤を繰り返しながら,夢中で訓練に取り組んできたが,まもなく,3年が経過し,この3月には第6期生が修了する。

以下,介護サービス科創設後の状況について述べる。

2.本校介護サービス科における応募および入校の状況

生徒募集は,ハローワークが窓口の中心となっており,近年は2倍を超える応募がある。

平成5年度から7年度の入校者をみると,

① 年齢別では,132人中,40歳代が44人(33.3%)と最も多く,次で20歳代が39人(29.5%)である。

② 学歴別では,132人中,高校卒が85人(64.4%)と最も多く,次いで短大または専門学校を卒業した者が25人(18.9%)となっている。

3.訓練内容

介護サービス科の訓練内容は次のとおりである。

  1. (1) 訓練定員20人
  2. (2) 訓練期間6ヵ月721時間
  3. (3) 入校時期4月,10月
  4. (4)訓練目標
    1. ① 介護法を会得し,被介護者の日常生活の援助ができる能力を養う。
    2. ② 社会福祉とその対象を理解し,被介護者の状況に応じた福祉制度に関わる能力を養う。
    3. ③ 被介護者の状況に応じ,専門職への連絡が図れる能力を養う。
    4. ④ 社会チームの一員として,チームワークを身につけ,人との温かい触れ合いのできる人間関係が図れる能力を養う。
  5. (5) 訓練内容

教科別訓練時間は表3のとおりである。

表3
表3

厚生省認定資格ホームヘルパー1級課程の修了証書および労働省認定介護サービス技能審査資格試験受験資格を取得できるようカリキュラムを調整している。本校の特徴としては,介護技術の習得に力を入れており,介護基本実習の時間数を多くとっている。

① 専門学科について

当科には,常勤指導員が2人(保健婦・看護婦)であるため,介護概論・安全衛生以外は外部講師により対応しており,常勤指導員が労働省認定介護サービス技能審査資格試験や介護福祉士国家試験を参考にテストをし,理解できていない部分について教えている。

② 基本実習について

調理実習・家事実習については,外部講師と連絡を取りながら必要物品の準備をしたり,実習の補助をしている。また,掃除の実際については,常勤指導員が実施している。

介護実習では,移動・体位変換の技術を基本に日常生活における排泄・清潔・入浴・着脱衣・食事の介護等を行っている。移動ではベッドから車椅子へ,ベッドからポータブルトイレへ,ベッドからストレッチャーへ等,何度も繰り返し個々に指導を行っている。

介護実習の評価としては,労働省認定介護サービス技能審査資格試験や介護福祉士国家試験の実技を参考に,表4のような問題を3問だし1問できた者が2問に進めるようにしている。

表4
表4

そして,数人のグループを作り,介護者,被介護者,観察者と役割分担をし,観察者は,指導員とともに表5のチェック表で採点をし,相互に評価をする。

表5
表5

③ 応用実習について

技術を学ぶだけでなく,卒業後,すぐに介護職として活躍できるよう応用実習を取り入れている。

応用実習の実施場所は,図2のように変遷している。当初は特別養護老人ホーム・社会福祉協議会・身体障害者養護施設で計画していた。しかし,社会福祉協議会では,1日の受け入れ人数が少なく,訪問宅までの交通事情もあり,また身体障害者養護施設は,県内に3ヵ所しかなく他校の訓練生受け入れ態勢の関係などもあり,応諾されなかった。そのため県関係の施設に依頼したところ,同じ県の職場ということで,連携はうまくいった。また,職員の質も高く実習指導にも熱心であった。

図2
図2

しかし,そこ(県)への就職につながらないことや精神薄弱者・児施設や身体障害者更正援護施設に対する理解が未熟なこともあって,それらの県の施設における訓練については見学実習にとどめている。

実習施設については,通所距離や就職希望等もあり,本人の希望を聞いて校外実習を行っている。そのとき指導員は適宜巡回指導により,施設側と綿密な連携を取りながら実習指導にあたっている。また,校外実習に際しては心理的に不安定になって悩んだりすることもまれではないので,事前に訓練生と綿密な打ち合わせを行いトラブルの起こらないよう配慮している。

4.就職について

就職状況は,表6のとおりである。全体の就職率は98.1%で,そのうち老人保健施設が39.8%と最も多く,次に特別養護老人ホームが24.3%と多い。

表6
表6

5.おわりに

入校の時点から,生徒には就職ということを意識づけしながら,訓練をしている。現在,老人保健施設・特別養護老人ホームへの就職が多いため,選考面接時においても,就職先に夜勤のあるところがほとんどであるということも十分認識を得るようにしており,訓練においても,訓練生に常に就職を意識づけながら,それに沿える内容にと努力している。老人保健施設では,ケアマネージメントが実践されており,そこまでの能力を要求されているところもある。

今後とも,施設からの情報を十分に取り入れながら,その時代,その地域のニーズに合わせた内容にするべく励んでいきたいと考えている。

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