広島高等技術専門校は広島市の西部に位置し,市中心部のバスセンターより,バスで約30分のところにあります。広島市街や瀬戸内海が一望に見える高台にあります。
当校の訓練科は全部で10科あり,その中で短期課程(6ヵ月)は,ビル管理科,介護サービス科,給食調理科の3科があります。なかでも介護サービス科については,今日急速に進展している高齢化社会に関心が高まり,マスコミ等で大きな社会問題として,毎日のように取りあげられているため,介護職に関心を寄せる者が多くなり,年々応募者が増加しています。
昭和38年職業安定法ならびに緊急失業対策法の一部改正等により,女子失業対策事業紹介適格者および中高年齢層の女子失業者および25歳以上の求職者等を対象にして,家政婦等の家事的職業分野の職種について短期間に養成し,再就職させることを目的とし,家事サービス職業補導所が広島県においても開設されました。
以来諸々の改変を経て,昭和55年に現在地に校舎を移転するとともに,福祉ヘルパー科を設置し,58年までモジュール訓練を試行実施しました。年間6回の入校があり,定員20名・4ヵ月訓練で実施しましたが,2ヵ月問は40名が同時に重なって在籍することになり,まことに煩雑な内容となりました。また教室・実習室・経費・指導者不足等の原因で,実施が困難な状態でした。
当時は,今日のようにゴールドプランもなく,一般の関心もそれほど高くなく,2ヵ月ごとの入校者も少なくなったため,廃止し見直すこととなりました。
昭和59年からは家政科(福祉ヘルパー科)6ヵ月訓練の形となり,おりから高齢化社会に直面し始めたため,従来の家政・家事サービスの訓練から,介護サービスに比重を移しつつ,家政科の範囲で訓練を行いました。
法改正に伴い,平成5年4月から介護サービス科への移行となりました。毎日のように高齢化社会の問題点が取りあげられ,個々の家庭でもさまざまな問題を抱えています。ここ数年来,当校介護サービス科への入校希望者も,若年者から中高年齢者まで,毎期ごと定員の3倍を上回る応募状況となっています。
カリキュラムの策定にあたっては,介護サービス科6ヵ月課程のカリキュラムは示されていませんので,2年制のカリキュラムを参考にして地域のニーズに即したものを取り入れています。介護サービス科の訓練内容は幅が広く,専門的な分野(社会福祉関係・医学一般・リハビリテーション論・心理学等)が多くあります。専門的な分野については,現在の2名の指導員のみでは十分な指導ができませんので,それぞれの専門講師による対応となります。現在のところ,他校と比べますと講師時間数は十分ではありません。今後とも引き続き専門講師の充実を図っていきたいと思います。
当校では,カリキュラムの中にレクリエーション指導実習を実施していますが,これは入所しているお年寄りのうるおいのある生活時間の確保は福祉の現場では必ず必要な分野です。現に広島県では,毎年老人福祉施設芸能大会が催され,各老人ホームの寮母やお年寄りが出演して交歓会等の交流も図られております。また年間行事の中にも必ずレクリエーションの企画運営の能力が必要な場面が多々あります。
こうした観点から,当校では長年伝統として,各期に一度老人ホームを訪問してお年寄りの前で創作演芸発表会を行っています。そのためには,訓練生が創意工夫をこらして,5~6つの寸劇・手品・ナツメロ・銭太鼓等,バラエティに富んだ出し物を考え,おもしろおかしく演じて,実践能力を養う機会にしています。その練習をしていく中で,訓練生間がより親密になり,協調性が養われ,積極性も出てよい訓練効果をあげています。ある修了生から就職先の施設で,夏の盆踊り大会の企画を実施して大役を果たしたという報告を聞き,訓練効果があがっていることを実感しました。
平成5~7年度の応募の状況を表1に示します。
(1) 平成7年度入校者数60名
(2) 性別女59名男1名
(3) 年齢別
最高53歳最低18歳平均37.8歳(表2参照)
(4) 学歴(表3参照)
(5) 出身地域・ハローワーク別(表4参照)
修了・就職者数を表5に,職種別就職状況を表6に示します。
広島某内では現在8校の介護福祉専門学校がありますが,平成8年4月からさらに3校が新設され,11校となります。老人保健福祉計画により,県内の市町村では,少しずつ福祉関連施設が新設されていますが,大半が介護福祉士の資格を持った20代の若年者を採用しています。
当校は,今まで幸いなことに修了2ヵ月後の調査では,ほとんどの就職希望者が就職しています。しかしながら今後は,介護福祉士の資格を持たない当校訓練生への福祉施設等からの求人は,あまり期待できないと思われます。
おおかたの入校生が,介護職に就き介護福祉士の資格が取りたい,という熱意を持って入校します。6ヵ月間では,その資格は取れません。私たち指導員は,介護福祉士の受験資格が得られる職場へ就職できるよう努力しています。
求人について福祉施設等が採用にあたって一番重要視されているのは「資格がなくても気力体力があり,人間性豊かで笑顔のよい,優しい心の持ち主であること」ということです。これらの期待に応えるには,わずか6ヵ月の間にどのようにして人間性を培い,心豊かな人材を育成するかが課題です。
当校では,新卒者から社会経験豊富な離転職者までいるという訓練生の特性を生かし,この課題に対処するため,次のようなクラス運営を進めています。
20代から50代までの幅広い年齢層の訓練生同士が,若い人からははつらつとした動作の機敏性を学び,また中高年の人からは物おじしない落ち着いた態度,ねばり強さを学んで,お互いのよい点をミックスして明るく豊かな人間性がはぐくまれていくよう指導しています。そして6ヵ月間の短期間のうちに,効果的な指導方法により,修了後すぐに役立つ知識・技能を身につけて修了させるよう努力しています。
また指導員自身も,あらゆる介護の現場の実態を把握し,それに対応する的確な指導ができるよう,常に研鑽を重ねていきたいと思います。