毎年実施している入学試験の入試問題について誤答分析を行い,入試問題の良否を判定し,次年度の入試問題作成のための検討資料として活用している。また,分析結果を入学後の教科内容の検討にも用いている。以下に分析の方法と結果および改善事例について報告をする。
当カレッジの入試の考え方ならびに応募の状況について紹介しておこう。
数学(100点),電気(30点),国語(30点),面接(40点)
60名
応募者の最年少は20歳となるが,実際の合格者の平均年齢は23~24歳。また,例年合格者の中には妻帯者もおり,在学中は単身赴任の生活をすることになる。受験者のほとんどは本人の希望で受験するが,職場の上司の推薦が必要である。したがって,数字上の倍率は2~3倍であるが,実質の倍率はさらに高いものとなる。また,毎年再挑戦組(いわゆる浪人)も多数おり,カレッジにぜひ入学したいという受験生の『入学への強い意志』が感じられる入試になっている。
一般に行われている誤答分析の方法で行う。
以上の手順を具体的な例で示す。
(1) 表1は数学の問題別の正答率の生データである。
表中で問題14(2)は合格者グループの正答数がわずか3人で正答率が5%,不合格者グループでは,130人中正解者なしで,正答率は0%である。また,最もやさしい問題は問題13で,合格者グループでは96%が正解,不合格者グループでは43%が正解となっている(表中の□の部分)。
(2) 図1,図2に92年度の数学,電気の入試問題の正答率曲線を示す。グラフから,
①数学の問題9(1),10(2)などは適切な問題ではない。
②数学の問題6は難しすぎて弁別できていない。
③電気の問題1(1),2(1),2(2),2(3)などは弁別度が低く,いずれも適切な問題ではない。
(3) 図3,図4に92年度の分析結果を踏まえて作成した94年度と95年度の数学の入試問題の分析結果を示す。
①92年度に比べ,各問題とも弁別度が大幅に向上した。
②92年度に比べ,合格者グループの正答率曲線は右下がりの緩やかなカーブで弁別度は40~50%できわめて高く,合否に寄与したよい問題である。
③図3で問題10(1),8など弁別度を低下させている問題もまだある。
④図3で問題1-2),1-1)などの計算問題は弁別度を低下させている。
⑤図4で問題4は毎年出題している問題であり,不合格者グループもよく学習している。正答率が向上し,弁別度は低下した。
⑥図4で問題14-2)は難しすぎる問題であり,合否の弁別に寄与していない。
(4) 図5に95年度の電気の問題の分析結果を示す。
①92年度に比べ,95年度は弁別度が大幅に向上した。
②問題1(3)は毎年出題している問題で弁別度は低下している。
③問題3(1)などの新分野の問題も合否の弁別に寄与している。
以上の結果をもとにして,地道に努力した者が点を取れるような問題をある程度推測することができ,図6のような理想的な弁別度曲線をイメージしながら問題の作成に取り組んでいる。
過去に弁別度を低くした問題例を紹介する。
右のような図を提示したため,容易に式が立てられ,不合格者の正答率が際立って高くなった。
曜日を解答する問題は当てずっぽうで当たることがあり,不合格者の正答率が高くなった。
将来の職場の核になるような優れた人材を育成するために,入試の段階から品質のよい問題を作り,適切な選別をするように努めている。多くの応募者の中から,学習意欲の高い人材を選別することが不可欠であり,単に頭がきれるというのではなく,地道にコツコツと努力するスタンスこそ,ハードな学習についてこられるものと思う。受験生にとって,『努力したから合格できた』『努力を怠ったから合格できなかった』という実感がもてる良質の問題作りに今後も取り組んでいく。