近年,建築業界の中で,特に内装・ディスプレイ(展示)・塗装業界関係では,シートをカッティングして作成した図形・文字,またカラフルできれいに出力された図形・文字を使っての店舗ディスプレイ・屋内外広告・サインなどの各種表示の作成ができるシステムが広く利用されつつある。写真1~4は,身の回り(当施設内)にある実際例である。
本システムは,この種のシステムで,パソコンを使って各種サイズ・書体の文字やいろいろな図形を作成し,カッティング・マシンでシートをカットしたり,あるいは紙に直接プリンタで出力が可能なものである。
このシステムは,主として,能力開発セミナー,授業,卒業研究,短期実践技術研修での利用を計画・実施しているが,ますます建物の内外の環境が,美的快適性も要求される状況の中で,当施設内の表示等の整備や業務等の面でも活用されている。
本稿では,システムの概要と作成例の紹介,そして若干の考察に触れる。
このシステムは,各種の周辺機器との対応が充実しており,カッティング・マシンやプロッタとの接続はもちろんのこと,手軽なカラー出力ができるカラー・プリンタ,きれいで速い出力のレーザ・プリンタにも接続の対応がされているほか,スキャナで取り込んで処理することも可能であり,この種のシステムとしては幅広い活用が期待できるものである。本システムの構成を図1に示す。
文字入力を含めた豊富な作図コマンドがあり,階層メニュー化されており便利である。
画面表示の拡大は,任意範囲箇所の拡大や1,2,5,10,20,40,60倍の拡大を瞬時に表示できるので,楽に細かな作図が正確にできる。
また,要素単位・グループ単位の移動,複写,ミラー反転,削除,伸縮や,角部の修正,線分の延長・カット等々が簡単にできる豊富な編集機能を備えている。
標準での高品位アウトライン文字フォント3書体(中角ゴシック体,中丸ゴシック体,明朝体)のほか,本システムではオプションで3書体(横太明朝体,太角ゴシック体・太丸ゴシック体)の計6書体を備えている。
文字スタイルは,斜体,長体,平体の指定が自由にできるうえ,部分的なデフォルメが可能な変形や,文字の中にストライプや塗りつぶしをするハッチング機能等もある。
作図コマンドの体系がわかりやすいので,入力はコマンド・メニューを選択した後は対話形式でキー操作に迷うことはない。マウス入力が主であるが,キー入力もできる。メイン画面上では,右側に作図コマンドがレイアウトされており,縦2列の左側がメイン・メニューで,いずれかを選択すると右側の縦1列の中にサブ・メニューが表示される(写真5)。
作図画面は,方眼紙感覚で,縦横のクロス・カーソルは,座標位置もわかりやすく,座標の入力も簡単である。
文字入力は,好みのフロントエンド・プロセッサを組むことが可能である。
カッティング・マシンを含むプロッタ出力,プリンタ(カラー対応を含む)出力,レーザ・プリンタ出力が可能であり,原寸での出力による検図や線色に対応したカラー出力等にも便利である。
出力サイズは,本ソフトの用紙サイズでは,最大A0判であるが,各種出力機器のそれに従う。
ここに,かつて建設フェアで使用するために協力して製作した横看板を取り上げ,操作(作成)手順について概説する。
① まずあらかじめ,看板の寸法にあった文字サイズ,書体を検討しておく(後に変更も可能)。
② 用紙サイズを決める。
③ メイン・メニューで「文字」を選択し,サブ・メニューで「横書均等」等から適当な文字入力方法を選択する。
④ CTRL+XFERで,文字入力をする。
⑤ 「書体確定」をする(写真6)。
⑥ 「ファイル」で,「登録」しておく。
⑦ カッティング・マシンにシートをセットし,実際にカット・テストを行い,ペン(カッタ)圧を調整しシートの切れ具合を確認する。
⑧ 「出力」で,「プロッタ」を選択し,プロッタの機種設定をした後,出力(シートのカット)する(写真7)。
⑨ カッティング・マシンからシートをはずし,カットされた文字の不要な部分を剥し,上からアプリケーション・シートをかぶせ接着させる(写真8)。
⑩ シートの裏側の台紙を剥し,看板に文字を接着させ,その後にアプリケーション・シートを剥す。
この手順要領で,文字や書体ごとに,繰り返し作成しカットして,看板等に貼ると完成する(写真9)。
ここでは,このカッティング・システムを利用して作成したもののうち,雇用促進業務,施設の環境整備に関わる実際の作成例数例をあげて紹介する(図2~図6)。
本システムを使ってみると,作図コマンドが階層化されており,アイコンの選択がしやすいうえ,対話形式なので,誰でもすぐ使えるほど大変操作の簡単なシステムであることが確認できた。
シートを実際にカッティングして気が付くことは,シートの保管の仕方が重要であることがわかった。
シートは,通常,筒状に丸めたり,筒に巻き付けて保管しておくわけであるが,小さく丸めておいたシートは,カッティング・マシンにセットする際やカッティング中に,シートの脇のほうからシートと台紙に剥離が生じ,そこに空気が入り浮き上がった皺となりその皺が広がっていくことがある。このとき,この浮き上がった皺をカッティング・マシンのカッタの刃が通過すると,シートを引っかけてしまいシートを引きずり,出力中のものを一切ダメにしてしまうトラブルとなる。
この皺の発生については,シートの材質,シート厚,台紙厚,接着力等メーカによっても,また使用時の気温,セットするシート面積等々によっても違うわけであるが,総じていえることは,シートを小さな径でかつ粗雑に丸めておいたものに発生しやすい。したがって,シートの保管は,できれば大きな径の円筒状のロールの芯にていねいに巻き付けておくことが最良といえる。
また,カッティング後のシートを剥す際,滑らかにシートが剥れない場合もあるが,これはシートが十分に切れていないのであるが,シートはメーカによって厚さや材質に若干の差があるので,テスト・カットで切れ具合いをその都度確認し,カッタのペン圧を調整すれば,手間取る間違いはない。
文字のカッティング可能な最小サイズについては,試しに15mm四方の漢字もカッティングしてみたが,おおよそ可能であった。しかし,むしろ不要部分のシートを剥すことの面倒さや,文字の残したい部分が動いてしまいやすいこと等から,手間だけが掛かり大変面倒であり,カッティングで作成し活用する有効なサイズが自ずと決まるといえる。
このパソコン操作から始まるカッティング・シートを使っての看板等の製作の全プロセスを踏まえてみると,文字数が少なければ別だが,意外に大変なのは,カッティング後の作業で,不要な部分のシートの剥しとその後のシートの貼り付けで,文字数が多いほど手間が掛かって面倒であることがわかった次第である。
本システムは,前述のとおり,大変操作の簡単なシステムであり,活用目的のある方々には広く,大いに活用していただきたいと考えている。
能力開発セミナーでは,カッティング・システム(基礎編),同(応用編)の名称で実施している。
今後も,さらに,本システムが十分活用に供されるよう努力していく所存である。
CUTPOP取扱説明書〈セットアップ編〉,〈基本操作編〉,〈総編〉,いずれも株式会社エーティ.