• 職業訓練教材コンクール[1]3
  • 栃木県立県南高等産業技術学校  西宮 浩己

1.はじめに

電気工事士の筆記試験における鑑別問題については,工具・測定器・材料が出題される。問題は写真を見て「これは何という名称ですか」「これはどのように使われますか」という問いに答える。実際に現場で作業を実施している者にとっては現物の知識はあるが,現場経験のない者にとっては初めて見る工具や材料等が多く,写真や説明だけではなかなか把握しきれない。このため映像をパソコンにより処理し,必要なものだけを随時取り出し反復学習することにより,工具・測定器の大きさや使用法などをよりわかりやすく習得することを目的とし,本教材を作成した。パソコンはMacintoshを使用した。

2.教材の概要

2.1 主な特徴と設定

  • ・項目は鑑別の工具,測定器と説明などの情報の3項目に分かれる。
  • ・パソコン操作の知識がほとんどなくてもだれでも操作できるよう,選択した映像が終了すると自動的に元の映像に戻るようにした。
  • ・メモリ容量や圧縮,再生速度などを考慮し映像の大きさを画面の1/4とした。
  • ・1つの項目について時間は10~20秒程度,容量は1~2.5MB程度である。
  • ・必要と思われる映像にはナレーション以外に実際の音も入っている。
  • ・Macintosh以外にも個々のファイルごとにはWindows95上で再生可能とした。

2.2 操作法

① 電源を入れるとAt Easeが起動し画面1(At Easeダイヤログ)のようになる。見たい項目をクリック(マウスの矢印を動かしてマウスのボタンを1回押す),次に開始をクリックする。

画面1
画面1

参考:システム設定は選択してもパスワードを入れないと開始できない。工具,測定器,情報からはプログラムの変更やファイルの削除等が行えないよう設定してある。At Easeは初心者が操作しても,このようなトラブルが起こらず,セキュリティ機能も果たす。

② 開始すると画面2(At Ease項目)のようになる。見たい項目のアイコン(並んでいる四角の絵)にマウスを移動すると録音しておいた音声が自動的に再生される。

画面2
画面2

例えばワイヤーストリッパの位置にもっていくと「ワイヤーストリッパ」と音声がでる。

③ 次にワイヤーストリッパの位置でクリックすると画面3(ムービー)のようになり映像がスタートする。再生時間は15秒前後,終了すると自動的に画面2に戻る。

画面3
画面3

④ 測定器の項目を見たいときは画面2の状態でキーボードから(Command)+Qを入力すると画面1に戻る。

⑤ 終了したいときは画面1でマウスを使ってシステム終了をクリックすると電源が切れる。

2.3 教材の制作について

実際に映像として制作する過程と方法について説明する。

① 撮影は一般のホームビデオカメラで行った。今回は8mmビデオカメラを使用した。撮影は構図や内容等を考え,ビデオカメラを三脚に固定したり手で持ったりしながら目の前にテレビを置いてモニタとして使い,動きを確認しながら行った(写真1)。1人でできないものについては訓練生に手伝ってもらい撮影した。

写真1
写真1

② 撮影した映像をパソコンに取り込むには,映像を取り込むための専用ボードが必要となる。今回はビデオプレーヤーカード(写真2参照)を使用した。このビデオカードを使うためのソフトで映像をアバウトにカットしながら取り込んでいく。

写真2
写真2

取り込むというのは,ハードディスクに映像をデジタル化してファイルとして保存していくことである。映像データは多くのメモリを必要とするのと処理速度の関係で,取り込む時点で画面の大きさを1/4とした。

③ 編集作業には,映像編集用のソフトが必要となる。映像編集ソフトはいくつかあるが,今回使用したソフトは Avid VideoShop で行った。②でアバウトに取り込んだ映像ファイルをスタート位置,ストップ位置,時間を自由にカット編集し,映像トラックにはめ込んでいく。同様に音声トラックにナレーションをはめ込んでいく。全体の時間調整のためトラック上でカットや付け足しも行える(画面4:VideoShop)。映像トラック,音声トラックとも複数使うことが可能で,映像をだぶらせたり,画面チェンジを行ったりの設定もできる。

画面4
画面4

編集が終了したらムービーとして保存する作業を行う。保存設定の中で,表示位置,ムービー終了後元に戻る等の設定を行い,ムービーアプリケーションとして保存する。この方法により保存すると編集ソフトの Avid VideoShop がなくても単独で再生可能となる。

④ 以上のような作業の繰り返しにより,作成したものが,工具31,測定器19の合計50のムービーとなった。これらムービーのデータは合計約80MBとなった。

3.訓練の活用

まず,この教材は鑑別問題の資料である。したがって,これを利用し授業を進めていくものではないため,個人個人が,それぞれのペースで好きなときに利用できる環境を設定することが必要である。

できあがったものを実際に訓練生に操作してもらうと,ゲームで遊ぶようにマウスを動かして楽しんでいた。パソコンを動かし勉強するというよりちょっと雑誌をめくる感覚で,興味をもってもらった。これで簡単にだれでも操作可能という目的は達成されたと思う。

教室に何台か設置し,いつでも自由に楽しめる方向で考えたい。

4.おわりに

最初はビデオ教材を作ろうと考えたが,資料をめくるように簡単に必要なところを何度でも繰り返し見ることが可能な方法はないかとパソコンの利用を考えた。

以前に比ベパソコンは性能が良いものが安価になり,ハードディスクや周辺機器も良いものが安く手に入るようになった。併せて,映像編集ソフトも使いやすく,これもまた安価になったことが,今回の教材作成の一助になった。

映像データ,音声データのデータ量がこれほど大きいものであることにあらためて驚かされ,今回の作成で実感としてわかった。作成のためハードディスクに取り込んだ量は500MBを超え,このためにハードディスクを追加しなければならないほどであった。教材コンクール提出の際もデータ量の多さにフロッピーでは難しいと考え,パソコン本体で出そうか,外付けのハードディスクにしようかと迷ったが,広報普及室に相談するとMO(光磁気ディスク)で対応してくれ,機械はどうにかしますからということで,MOでの提出となった。

材料の項目が作れなかった。材料は学校レベルでの調達,施工現場の撮影等難しいものもあるが,可能な範囲で,随時追加したい。また。ファイル形式を統一し各所でも同じような映像データを作成することによりデータの統一化とデータベース化が図れ,電気工事分野に限らず,映像資料として相互活用できると思われる。

今後の目標としては,電気工事の完成図の一部をクリックすると,その場所の材料や工具の使用法などがムービーとして起動する,そんなようなものを制作したい。

また,今回教材作成に協力してくれた訓練生諸君,本校職員の山本昌枝氏,Macintosh の使用に当たり,ご助言いただいた職業能力開発大学校体育研究室と栃木県立足利工業高等学校の高松秀和氏,教材の提出方法についてご指導いただいた職業能力開発大学校研修研究センター広報普及室に厚くお礼申し上げます。

5.参考文献およびデータ

(1) 参考文献

  • ・第2種電気工事士マスターシリーズ機器・材料工具/鑑別・配線図 定清一成 (株)オーム社
  • ・第2種電気工事士筆記試験速修合格対策 (株)綜文館
  • ・第2種電気工事士筆記試験問題の研究 (株)オーム社
  • ・電気工事士実技教科書 労働省職業能力開発局・雇用促進事業団職業能力開発指導部編集 (社)雇用問題研究会
  • ・VideoShop がよくわかる本 近藤龍太郎 (株)メディア・テック出版
  • ・アドビ・プレミア教室4.OJ (株)エムディエヌコーポレーション

(2) ハードウェア

  • ・パソコン Macintosh Performa 6210 アップルコンピュータ(株)
  • ・パソコン Macintosh Performa 588 アップルコンピュータ(株)
  • ・ビデオプレーヤーカード Apple Video System アップルコンピュータ(株)
  • ・ビデオカメラ Handycam TR-75 (株)ソニー

(3) ソフトウェア

  • ・映像記録 Apple Video Player アップルコンピュータ(株)
  • ・映像編集 Avid VideoShop 3.0 Avid Teachnology,Inc.
  • ・選択ソフト At Ease 2.0 アップルコンピュータ(株)

6.応用

① Windows95での映像再生については,ソフトとしてQuick Time For Windows がインストールされていることが条件となる。フロッピーから直接起動するにはアクセスに時間がかかりすぎ映像が間に合わない,このためハードディスクにコピーしてから起動となる。

また,いろいろとやってみたが,同じWindows95でもNEC系のものは相性が悪く,DOS/V系のもののほうがうまく動作した。

② 今回のデータ量は1項目につきフロッピー1枚分,約1.4MBを目標に制作したが,説明の時間の関係で,オーバーするものもある。これを映像に影響がない程度に圧縮率を上げるか,説明を簡素化し時間短縮を図りフロッピー1枚分とする。

こうすることにより,1項目につき1枚分のフロッピーとなり,フロッピーの表側ラベルに絵を裏側に名称を入れ,いわゆる単語カードのように利用し(写真3:フロッピーの単語カード化),内容をもっと知りたければパソコンに入れると映像が見られるというものも作れる(現在フロッピー1枚約30円程度である)。この場合,ハードディスクにデータをコピーしたり,コピーしたデータを起動させるなどの自動処理の設定が必要となる。

写真3
写真3
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