メキシコ・ティファナで日本人社長誘拐事件が解決したちょうどその頃,周囲の人たらに「誘拐されないようにね!」という言葉に送られて,加古川を出発。パックツアーでもなけれぱ添乗員もいない。旅を共にするのは私の家族に,ご近所の子どもさん2人とそのお母さんの総勢7名,さながら「加古川子ども会ご一行様」といった風情の珍道中。
行く先は,メキシコ。JlCAの専門家として派遣されているK氏を頼って12日間の旅行の始まり。さて,無事メキシコにたどり着けることやら? ロサンゼルスの空港でJALから,無事エアロメヒコに乗り換えられるかどうか。
その心配が現実のものとなったのは,ロサンゼルスの空港でJAL機から降りたとき。わがファミリーのエアロメヒコへの予約は通っていたが,同行したSさんの予約がされていない! すがるような目で乗り換え案内の担当者に訴えるものの,だだっ広いトランジットルームに閉じこめられ,ひょっとして日本に引き返さなけれぱならないのかと,メキシコへの出発時間が迫ってくる中,不安な気持ちで待つことしばし…。エアロメヒコの搭乗券を受け取ったときには,心底ホッとした。
メキシコ空港に到着し,ボーディングブリッジを抜けて空港の建物入り口まで来ると,懐かしいK氏の顔がわれわれを迎えてくれた。加古川を出発してから22時間もの旅程であった。
メキシコシティの第一印象は,予想以上の大都会。うわさに聞いていた車の排気がスによるスモッグのせいか,空気がちょっとガソリン臭い。ところが,大都会はメキシコシティのみで,到着翌日に訪れたメキシコシティ北部,古代文明の遺跡に至る道路の周囲に広がる田園風景とのギャッブはとても大きい。週1回,車のナンバープレートの番号によって「車なし日」を設定しなければならないほどの車社会。とりわけ市内を走っているタクシーに目を引かれた。日本ではあまり見かけなくなった「ワーゲン」のなんと多いことか。とうの昔に生産中止になったはずなのに。K氏に聞いてみると,メキシコでは,現在も「ワーゲン」を生産しているとのこと。新車の「ワーゲン」を購入して日本で走らせるのもオシャレかもしれない。
K氏の職場にも1日だけおじゃました。今回のプロジェクトがスタートしてちようど2年が経過した時期であり,私が見学させてもらった日は,2年間の成果を外部に公開するセレモニーの当日。まだ,建物外溝工事は進行中で,完成まで今しばらく時間が必要な様子。短い時間ですべてのことを見せてもらったわけではないが,現地の人たちとの絆を深めるためのご尽力は大変であったろうと思われる。
メキシコは,メキシコシティにみる大都会の顔,古代文明遺跡に見る伝統の顔,田園風景に見るのどかな田舎の顔,カンクンに見る世界的なリゾートの顔…,10日あまりの旅行では見尽くすことのできない不思議な国,それがメキシコ。
ああ,もう,私に与えられた誌面は尽きようとしている。次にリレーのバトンを渡すランナーを射止めておかなけれぱ…。
次なるランナーは,このお話に登場したK氏,黒木猛さんです。彼は,現在メキシコですが,3月初旬,無事2年半の任期を終えて帰国します。帰国してから私のバトンを受け取ってくれる予定です。それでは,黒木さんよろしくね!