• ポリテクカレッジ岡山(岡山職業能力開発短期大学校) 情報技術科
  • 鈴木和生・大谷克彦・高橋美穂・藤栄成圭
  • 野上泰道・樋口智恵・中谷和之

1.はじめに

近年のパーソナルコンピュータの高性能化と低価格化によって,一般家庭にパソコンが普及し始めた。特に,一昨年のウインドウズ95の発売以後は,その普及にますま拍車がかかった。この状態は,数年前には予想もできなかったことである。また,音や画像データの急速なデジタル化と,通信のネットワーク化によって,パソコンは家庭におけるマルチメディアを使った情報端末として重要な存在になりつつある。

したがって今回は,この「マルチメディア」をテーマに,比較的簡単に体験できるシステムを作成することにした。

そして,具体的に見ることができ,体感のできる情報技術科の「ものづくり」として,昨年の卒業研究で使った鉄道模型を使ってシステムを構築した。なおこの題材は,昨年からの継続研究でもある。

2.概要

システムの全体構成は,大きく3つのブロックに分類できる。

  1. ① 鉄道模型を実際に走らせる走行部分
  2. ② 列車をコントロールするために,マイコンを主体としたコントロールユニット
  3. ③ コントロールユニットを総合管理し,人間による操作をより簡単にし,また,わかりやすく表現するために,パソコンを主体としたホストコンピュータ

以上の3構成になっており,コントロールユニットとホストパソコンは,RS232Cによって接続されている。

そして,今回のテーマであるマルチメディアを積極的に取り入れるために,ホストパソコン側は,OSとしてWindows95を採用し,開発言語としてVisual Basicを採用した。これは,昨年の研究テーマの積み残しテーマでもある。

コントロールユニットは,簡単なデータ表示を可能とするために,LCDの表示機能を持たせた。これも,画像による簡単なマルチメディアであろう。また,ソフトの開発効率を上げるための回賂の追加も行った。

鉄道走行部分は,より複雑なスケジュール運行を可能にするレールレイアウトにした。また,運搬,設置を簡単にするための基盤構成とし,コントロールユニットとの接続も簡単にできる仕様とした。

3.使用機器

3.1 コントロールユニット

開発機器

NEC PC-H9801

手製RAMライター

AKIROMライター

開発ソフトウェア

基本OS MS-DOS Ver6.2

アセンブラ X80,link4

エディタ MIFES

その他ツール HEXBIN

AKIROM

基本回路

Z80ワンボードマイコン

(AKI80-10MHz)

DCモータ制御

(東芝製 TA8429H)

ポイント制御

(リレー使用)

センサ感知

(リードスイッチ使用)

液晶表示装置

(LCM-595-311A,HD61830B)

3.2 ホストパソコン

開発および使用機器

DELL NETPLEX433/P

(CPU 80486DX2.66MHz)

富士通 FM-TOWNS2HR

使用ソフトウェア

基本OS Windows95

TOWNS-OS Ver2.1

言語 Visual Basic Ver4.0(16ビット版)

3.3 グラフィック開発

使用機器

エプソン製 GT8500(SCSI仕様)

開発ソフト

PAINT SHOP PRO Ver3

TOWNSの各種キャプチャーツール

4.各部の詳細

4.1 コントロールユニット

コントロールユニットは,大きく分けて4つの基板から構成されている。

① マザーボード基盤

AKI-80によるマイコンボードと8255によるPIOの増設回路より構成されており,各種データの処理,ホストとの通信を担当している。

② LCDおよびセンサ部

レールに埋め込まれたリードスイッチからの信号の読み取り回路と,液晶パネルにデータを表示する回路から構成されている。

③ ポイント切り替え部

線路の各部についているレールの分岐ポイントを切り替えるための回路と,過負荷およびショートによる事故を防ぐための回路より構成されている。

④ PWM部

外回りと,内回りの各独立した2系統の電源制御回路よりなり,電流の実行値を調節することによってスピード制御をし,極性を変えることによって,前進,後進させる回路より構成されている。

なお,その他にソフト開発を効率よくするための回路が組み込まれている。

4.2 ホストコンピュータ部

マルチメディアを容易にするために,Windows95を使用し,開発言語として,Visual Basic Ver4.0(16ビット版)を使用した。これは,コントロールユニットと通信する手段として,RS232C接続を使用したが,これを可能にする通信フォームが提供されているからである。ちなみに,32ビット版にはまだ提供されていない。

パソコンのインタフェース部分は,マウスを使用して操作できるようになっている。

なおこのシステムは,①メインフォーム,②自動運転フォーム,③サブフォーム,④通信フォームという,4つのフォームから構成されている。

① メインフォーム

システムは,このフォームを中心に展開され,線路全体の表示,各種画像データの表示,ポイントの切り替え操作,列車の稼働表示,列車のスピード操作,前進・後進操作,それらの画像表示,各種ウインドウのオープン操作とがある。

図4画面中央のストップウォッチのコントロールはタイマコントロールといい,実行時には表示されない。

図4
図4

② 自動運転フォーム

メインフォームの自動運転フォームのボタンを押すと,メインフォームと重なって自動運転フォームが表示される。このフォームでは,自動運転させるときに,そのデータが格納されているディスクからそのファイルを読み込み,コントロールへ出力する。

③ サブフォーム

このフォームも実行中には表示されない。サブフォームの役割は,メインフォームの表示する絵を一括して保存しておくことである。サブフォームの絵をメインフォームのイメージコントロールに表示してやることで,デジタルでのスピード表示,ポイントの切り替え,センサの表示,各種画像データの交換をすることによって,画像データの処理を行っている。こうすることによって,レスポンスのよい表示を可能にしている。

④ 通信フォーム

このフォームは実行中には表示されないが,コントローラとの送信,受信はこのフォームを通して行われる重要なフォームである。

図7の電話の絵は,通信コントロールであり,タイマの絵は,タイマコントロールである。これは,定期的にコントローラに各種処理をさせるために使っている。

図7
図7

5.まとめ

今回最終的には,OSとしてWindows95,開発言語としてVisual Basic Ver4.0(16ビット版)を使用したが,開発スタート時には,Windows3.1,言語としてVisual Basic Ver2.0しかなく,特に通信の部分は標準で持っていなかったため,WindowsのAPIを使って処理をしていた。そのため動作も不安定で,詳しい情報もなく大変苦労した。ただ,Ver4.0の通信コントロール部分も,マニュアル書の中に解説はなく,HELPから必要な情報を出して処理をした。しかし,Windows95の安定性はよく,画像データも扱いやすく,これからのマルチメディアの到来を予感させた。

最終的には,当初の目的であったFM-TOWNSでのシステムを,一般的なOSであるウインドウズのシステムに変えることに成功した。しかしながら,時間的な制約もあり,マルチメディアの部分は,静止画像の処理に終わってしまった。したがって,今後この部分の発展と改良を加えていきたいと思っている。

〈参考文献〉

  1. 1) 作って楽しむ Visual Basic for Windows,毎日コミュニケーションズ
  2. 2) Visual Basic リファレンス,ナツメ社
  3. 3) Visual Basic 操作ハンドブック,ナツメ社
  4. 4) Visual Basic で作る Windows アプリケーション,ソフトバンク
  5. 5) Visual Basic パワフルテクニック大全集,インプレス
  6. 6) Microsoft Visual Basic リファレンス,Microsoft
  7. 7) Microsoft Windows 機能ガイド,Microsoft
  8. 8) 作れるマイコンインターフェース,日本放送出版協会
  9. 9) よくわかるマイコン塾,CQ出版社
  10. 10) 2500AD クロスマクロアセンブラ
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