* 現愛知県立一宮高等技術専門校
** 現愛知県立高浜高等技術専門校
***現愛知県立東三河高等技術専門校
職業能力開発は,産業や経済の進展に伴い民間で実施の必要性が年々増加しており,平成8年度から始まる第6次職業能力開発基本計画においても施策の面で企業内外における職業能力開発の推進を積極的かつ効果的に援助すべき旨をうたっています。
雇用労働者に職業能力開発促進法で定める基準に従って教育訓練を実施している事業主およびその団体は,職業訓練認定申請を県知事に行うことができます。審査の結果,認定職業訓練校として普通課程や短期課程の職業訓練を実施することになりますが,場含によっては認定職業訓練助成事業費補助金等,種々の特典,運営面や訓練実施での各種指導や援助を受けることができます。
このように認定職業訓練制度は民間の職業能力開発支援という役割において,重要な位置づけにあります。
認定職業訓練校の教科書・教材については,すでに職業能力開発大学校研修研究センターから全国の共同単独認定職業訓練施設を対象に「認定職業訓練実態調査」(調査資料No.96,1994)が刊行され,一部調査結果が紹介されていますが,本調査では愛知県内の中小企業等団体で普通職業訓練普通課程を行っている県内の認定訓練校を対象に,教科書・教材の使用状況をさらに具体的に情報収集し,その結果をまとめてみました。
次の3点を調査の目的にあげて依頼しました。
① 各認定職業訓練校における教科書・教材等の使用状況を調べてもらう
② 既製(含市販)および自作の教科書・教材等の使用状況の調査
③ 認定訓練校で日ごろ訓練を行ううえで教科書・教材等での問題点について
調査は認定訓練校の現状を把握することと,調査結果を分析する過程の中から中小企業団体等で行う職業能力開発に関する相談サービスやその他のニーズに,開発援助課の業務課題を見いだすことも目的としました。
愛知県では,平成8年1月現在で認定職業訓練が96の施設で行われていますが,普通職業訓練普通課程を実施している事業所・団体の認定訓練校は45校あります。うち今回の調査は,前述のように主として中小企業主等団体で行っている共同の認定職業訓練施設(表1)の23校で調査を行いました。
そのほとんどが認定訓練助成事業費補助金の対象団体であることから,愛知県職業能力開発課事業内担当業務のなかで郵送により各認定訓練校あて依頼し,回収期間を3ヵ月設ける方法で行いました。
調査の記入は当該認定訓練校で実施している科目の数が異なることから,合計45科それぞれの科ごとに記入してもらいました。
図1は45科の内訳を表したもので,建設業関連の科目が32科とおよそ71%を占め,次に製造業関連9科,サービス業関連4科という構成になっています。
調査項目は各科ごとに教科書・教材を既製(含む市販)のものと自主制作したものとに分け,使用目的を学科・実技とさらに分類し,次の細目ごとに記入することとしました。
① 使用している教科書について
訓練科目,教科書名,著者(編集),出版社,備考 自作教科書は内容,制作日を記入
② 使用している教材について
訓練科目,教材名称,作者(製作所),内容・規格・寸法等,備考
自作教材は製作日を記入
③ そのほか教科書・教材等についての意見
今回の調査は回収率が100%と23校すべてから回答を得ることができ,調査に対する積極的対応に訓練への意欲や要望等が感じられ,項目毎の記述内容については各認定訓練校とも真剣に検討していただいた様子がうかがえました。
科ごとに調査を行ったことから設問の内容によって該当しない場合もあり,項目ごとの合計数が異なったことは否めませんでした。
教科書として認定教科書と市販参考書を用いた全体の使用数と学科・実技別に表したものが図2となります。1科当たり平均10.2冊の教科書を使っていて,学科と実技の割合は8:1となっています。認定教科書と市販の参考書を併用して使う訓練校が多く,全体の使用数での認定教科書数の割合は64%と半分よりやや多く,団体等の共同認定訓練校では認定教科書に依存していることがわかります。
市販の参考書は書名,著者名等を具体的に記述してもらいましたが,認定訓練校によっては参考書の内容のすべてを使用するのではなく,必要なところを部分的にコピーしてまとめテキストに使っている場合もあり,今回の調査の数字として申告しにくいとの意見もありました。
また,特殊な職種の科目のある認定訓練校では,教科に適する教材が見当たらず,主として支援業界・団体で作成した教材のみを使用して訓練を行っているところ(2校3科)もありました。
既製(認定・市販)の教科書のほかに独自に開発した教科書を使用している認定訓練校が9校14科から報告があり,学科用11冊,実技用16冊で合計27冊の調査結果でした(表2)。また,そのほとんどが県内の認定訓練校支援団体あるいは関連職種協会で作成されたもので,講師が独自で作成したものも2冊ありました。
訓練のなかで市販の教材をどのように使っているか種類と数量を調べてみました(図3)。設備基準外のものを記入してもらう意味で,各認定訓練校で実施している科ごとに「職業訓練校設備基準」を調査書に添付しました。
記述のあったのは13校21科で,118種類の市販教材を使用している状況です。内容は学科・実技ともVTRソフトが主で,全体の66%を占めています。ほかに模型,OHPスライド等視聴覚教材を備えている様子で,その割合は図3のようになります。
この項目で購入教材をきわめて詳細に記入していた認定訓練校もありましたが,整理の都合上若干省略いたしました。
認定訓練校あるいは支援団体でオリジナルに作成した教材をあげていただきました(図4)。
結果は9校14科から合計38種類の自作教材の記入があり,模型(55%)が最も多く,ほかVTRソフトや資材標本等のサンプル集があげられました。
自作教材は団体や講師の独自な工夫と知識が盛り込まれているものもあり,認定訓練校によっては公表を控えてほしいとの要望があります。そのため正確な実態を表しにくい面もあるのですが,独創的で安全性や訓練効果が高いものであれば,さらに将来調査を行い,正当な評価につながるよう支援する必要があるかと思われました。
訓練を行ううえで教科書・教材等について,日ごろ感じていることを述べてもらいました。10校の認定訓練校からさまざまな意見がありましたが,要約すると次の3点となります。
今回の調査は,中小企業団体等が行う認定訓練校の教科書・教材の使用状況を把握する初めての試みであったにもかかわらず,各方面の調査に対する理解と協力に深く感謝いたしております。また,このことが各認定訓練校にとっても教科書の見直しや教材開拓等のきっかけになれば幸いと思います。
開発援助課として,今後とも調査結果をさらに分析し,各種情報提供や職業能力開発に関する相談援助など業務推進のための一助にしたいと思います。
また,将来的には調査項目の検討とともに対象をさらに広げ,事業所で単独実施の普通職業訓練普通課程や県全体の短期課程も含めた職業能力開発を調査するならば,集計し整理するなかで,認定訓練校にフィードバックできる具体的なよい結果も生まれるのではないかと推測されます。