• 居住系の能力開発 3
  • 埼玉県立川越高等技術専門校  神藤亀次・小野寺茂・吉沢勇次

1.はじめに

本校は,昭和33年,旧職業訓練法の施行とほぼ同じ時期に,川越市から川越市旭町地内の土地の貸与を受けて開設されました。

設立当初の訓練科目は,中学卒業者を対象とした板金科と溶接科が設定されています。

その後,技術革新に伴う産業構造の変革,高学歴化,労働力の高年齢化等の問題に対処し,労働者のより一層の質的向上を図るため,昭和61年4月,現在地の川越市並木地内に移転整備がなされ,訓練内容も2科60人定員から7科160人定員へと増加されました。

構造物鉄工科は,昭和61年,移転時に,養成訓練普通1類(中卒2年訓練)として新設され,定員20人でスタートしています。

しかし,中学校卒業者の減少と高校進学率の増加があいまって,公共職業能力開発施設に応募する生徒が少なくなってきました。また,入校した生徒の目的意識が薄いため,その生活指導に指導員のエネルギーの大半が費やされてしまい,肝心な技術・技能習得のための訓練にまで十分に手が行き届かなくなるなどで,中途で退校する生徒が続出しました。

こうしたことから,平成5年,県全体の訓練課程の見直しが図られ,高校卒業程度の能力を持つ者で,おおむね30歳までの若年者を対象とした「若年者コース」,性別・年齢・学歴不問のだれでも受講できる「生涯コース」,おおむね40~55歳の中高年者対象の「中高年者コース」等に各校・各訓練科を位置づけし,区分けがなされました。

本校,「構造物鉄工科」は,このとき「若年者コース」として位置づけられ,平成7年度から実施しています。定員は20人です。

なお,本校で実施している訓練の種類等は,表1のとおりです。

表1
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2.生徒の特徴と傾向

構造物鉄工科の生徒は,前述のように若年者コースと位置づけられたので,新規高卒者とおおむね30歳までの離転職者が入校してきます。平成7年度以降の年齢構成は,表2のとおりです。特徴的なことは,中卒課程の時代は,生徒の将来への目的意識が薄かったのですが,高卒者対象の「若年者コース」に変更してからは,入校に際して,きわめて明確な目的意識を持ち,就業希望先も,鉄筋工,測量士,建設現場監督,建築士,CADオペレータ,溶接工などと多種多様な業種を望んでいます。

表2
表2

また,若年者コースに変更した平成7年度には4名,平成9年度には1名の女性が入校し,男性に交じって学科に実技に熱心に取り組んでいます。こうしたことは中卒者主体の普通課程のときにはみられなかった現象で,時代の変革を感じずにはいられません。

3.訓練概要

平成7年度,訓練課程が変わったことにより,訓練期間も2年から1年へ短縮されました。このため,当然実技時間が少なくなり,基本実技の最も基本的な作業(例えば,けがき作業,やすり仕上げ作業,はつり作業,はさみ切断作業等)で第1期の時限数を使いきってしまい,応用課題まで踏み込めず時限数不足となってしまいました。

また,構造物鉄工科で訓練を受け,修了時の技能照査に合格すると,2級技能検定(構造物鉄工作業)の学科免除になります。

この免除資格を生かすためには,さらに国際職業訓練競技大会(技能五輪)地方大会を受験し,これに合格すれば,技能検定の実技試験も免除となり,1年間の実務経験で晴れて2級技能士となれるわけです。

しかし,「技能五輪」参加を訓練に導入すると,「構造物鉄工」は前期の種目にある関係で,7月下旬の地方大会までの期間に,技能五輪の課題をこなせるまでの技能の習得をさせなければなりません。

従来の訓練計画に基づく通常の基本作業を訓練していては日程的に困難です。

こうしたことから,入校直後の訓練導入時から地方大会の課題を取り入れ,手作業を伴わない機械加工による課題製作を行い,より一層の訓練に対する興味づけと基本作業の重要さを身につけさせるよう訓練を実施することといたしました。

技能五輪・地方大会には,年齢制限にかからない訓練生は,できるだけ受験させるようにし,そのうち,成績のよい者を全国大会に出場させています。ちなみに,平成7年度は3人,8年度は2人を出場させました。平成9年度は,3人出場させる予定にしています。

全国大会での成績は,思ったほど振るいませんでしたが,出場させることにより,訓練生自身,各都道府県の技能のレベルを体験でき,技能の重要さとすばらしさをより身近に肌で感じさせることができたと思っています。

訓練科目ならびに時限数は,表3のとおりです。

表3
表3

また,平成7・8年度と平成9年度の実技訓練の実施時期については,表4表5のようになっています。

表4
表4
表5
表5

特徴的なものとしては,学科では建築法規,測量を,実技では測量実習,パソコン(CAD)製図などを取り入れ,多様化している訓練生の技能ニーズに対応しています。

平成8年度には溶接ロボットを購入し,操作取り扱いや安全技能講習などを実施して業界ニーズにも応えた訓練内容にしています。

現在訓練に使用している設備,機械等は,表6のとおりです。

表6
表6

4.今後について

平成7年度に若年者コースに変更したことで,翌年度には応募者が激減しました。

県立高等技術専門校の金属加工系職種を担当する指導員で構成する専門部会において,訓練内容を含めて検討した結果,応募をちゅうちょする原因の1つに,「科名」がありました。

構造物鉄工科という科名では,どのような内容の訓練を行っているのか応募する生徒がよく理解できず,興味を示さなかったことがあげられました。

また,高等学校の進路指導担当教員からも,「構造物鉄工」という名称が抽象すぎて,どのような訓練内容なのか,生徒に対して説明しにくいという指摘もありました。

こうしたことを踏まえて,平成10年度から,科名をより具体的な名称として「鉄骨建築科」とし,訓練内容も建築知識等大幅に建築系の訓練教科目を導入することとしました。

そして,将来,できれば2級建築士への道も開けるよう取り組む考えです。

また,技能五輪への挑戦は,当分続けることにしています。

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