図1 R2年フォークリフト事故別割合(死亡事故)沖縄職業能力開発大学校 塙 淨子,相原 豊,井関 修司※ 井関氏 現 港湾職業能力開発大学校神戸校現在の物流業界は,人手不足,労働者の経験不足,物流作業の効率化と速さ優先で安全対策がおろそかになっている,十分な安全教育の時間を設けられないといった課題がある。また,自動化や荷役機械の大型化・高度化によって,事故件数は減少しているが発生する事故が重大化・深刻化している。しかし,現状の安全教育は,若い人たちの受講態度の悪さや一般的な内容が中心で職場のリアリティーさが欠けているなどの課題がある。現場作業者以外が出入りすることも多い物流倉庫では,ヒヤリハットや事故の発生要因が伝わり難いといった点もある。そこで安価で手軽に,視覚で体感し危険を認知する力を付けられる教育ツールとして,360度カメラを活用できないかと考え,「ARを用いた安全教育用教材」の作成を試みた。次のことを教材作成の目的として,過去の事故統計データ(図1)から事故割合が高いフォークリフトの激突事故と小型移動式クレーンのつり荷落下事故をテーマとした。・視覚により現実に近い体験をし,危険に対する感受性を高める・安全な状態で,実際のヒヤリハットや危険を体感する-9-・瞬間を切り取った写真やイラストを用いた従来のKYTではなく,全方向の危険あるいは一定の作業工程にある危険を対象にする・不安全状態・不安全行為が見つかった,あるいはヒヤリハットが発生した場合,すぐに映像化し体感を共有する・高度な技術を必要とせず簡単に映像化することが可能である2種類の映像構成(表1)にし,1つは同種の危険を異なるシチュエーションで,連続して視聴するようにしている。繰り返すことで「もしかしたら~かもしれない」を想像し,前述の「危険に対する感受性を高める」ことを狙っている。もう1つは,同じ危険を異なる視点で,連続して視聴するようにしている。この構成は,視点を変えた映像を見ることで,異なる立場での見え方や死角の存在など作業状況を理解することを想定している。1.はじめに2.教材の構成令和4年度職業訓練教材コンクール 特別賞(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長賞)受賞ARを用いた安全教育用教材
元のページ ../index.html#11