2023年3号「技能と技術」誌313号
16/32

図1 旋盤作業中の巻き込みによる災害状況千葉職業能力開発促進センター 小笠原 邦夫※現 高度訓練センター生産現場では安全教育を実施し,災害防止の取り組みが行われている。しかし災害はゼロにはならず重篤災害に見舞われるケースも発生している。こうした中,能力開発セミナー(機械保全)受講企業から,生産現場で巻き込み災害が発生したため実務に基づく安全教育に関する講座を実施してほしいとの要望を受けた。そこで生産設備や製造品目に限定せずに,グループリーダーや安全・教育担当者を対象に,作業安全の構築に向けた講座(2日間)を企画し,実施した。また生産現場で災害発生頻度の高い空気圧シリンダによる挟まれやベルトやチェーンなどの回転機への巻き込まれについて,危険感受性を高めることを目的に危険体感装置を設計製作し,講座で活用した。講座実施後に安全教育理解度(到達度)を確認した結果,受講者からは「安全推進者として生産現場に適切に指示ができる」などの有益な回答を得ることができた。本論では生産現場で発生する災害と安全教育に対する要望を調査し,「災害ゼロに向けた作業安全への取り組み」の経緯と講座への展開,成果と今後の課題について述べる。-14-自動車部品の生産現場において,円筒部品を紙ヤスリで研磨中に巻き込み災害が発生した。災害状況を図1に示す。社内では定期的に安全教育を実施し,一定のスキルを身につけてから生産現場に配属させているが,作業時間に追われ,安全を軽視した独自の作業方法で行っているなど危険行為が随所に見受けられた。最近の設備は安全対策として保護カバーを設けるため,内部構造が分かりにくくなっている。そのため停止スイッチは押したが,刃物が惰性で回転し1.はじめに2.企業からの回転機巻き込み災害の相談3.災害発生の背景令和4年度職業訓練教材コンクール 特別賞(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長賞)受賞〜作業安全テキストの作成と危険体感訓練実習装置の設計製作〜生産現場における災害防止に向けた安全教育の実践

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る