2023年3号「技能と技術」誌313号
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図2 建設機械のトラブル発生原因持ち,日々さまざまな現場で建設機械を動かし仕事に励む中,建設機械が突然動作しなくなった時や,重大な異常が発生した際はどのような対応を行いますか?もちろん,上長に報告する。あるいは社内の整備担当者に相談する。場合によってはメーカーや普段取引のある業者に連絡するのが一般的だと考えられます。機械が動かなくては,せっかくの運転資格や技術が生かされません。自分自身で機械の状態を判断できる能力を身につけ,一刻も早く機械の異常に気づくことが大切であると考えます。一方で,近年普及が進むICT建機における導入の主な目的には次の3つが挙げられます。① 安全性向上② 生産性向上③ 労働力不足解消上記の目的はいずれもオペレーターの施工技術や安全面をサポートするものであり,建設機械の保守・点検をサポートするものではありません。実例として,ある企業から相談を受けた内容を挙げると,現場での安全パトロールにおいて,機械の作業前点検表を確認したところ,全項目に「異常ナシ」の欄にレ点が記入されていたそうです。そこで,パトロール実施者が点検者に対して「このレ点は機械のどの部分に当たるのか?」と尋ねたところ,点検実施者は回答できなかったとのことです。この要因として,点検実施者が点検表の項目を理解せずに形式的にレ点を記入していたことにあります。オペレーターの方々が身につけた運転技術や知識は,建設機械が正常に稼働することで初めて発揮されることから,自らも「異常に気づく,発見できる」必要があります。しかしながら保全技術についてはあまり関心がなく「保全についてはよく知らない」,「何かあったら業者に任せている」という声がよく聞かれます。ひとたび故障やトラブルが発生した場合には,機械の製造元であるメーカーや,普段取引のある業者,あるいは大きな企業であれば社内の機械(整備)担当者等が対応しなければ自らでは解決す-2-ることができないのが現状ではないでしょうか。このような建設機械の故障等によるトラブルは図2に示すように,約70%は日頃の日常点検や定期整備で防ぐことができます。しかし,これらの点検においては点検の目的,装置の構造や仕組み,潤滑油の役割に加え,作業内容等を十分に理解したうえで実施をしなければ,「単に見ている(眺めている)」に過ぎず,結果的に「点検表にチェックを入れることが目的」となってしまいます。これは,点検をする必要があることはわかっていても「具体的にどうすればよいかわからない」,「早く作業(仕事)に取り掛かりたい」,「法令上しなければいけないから取りあえずやっている」などが理由として考えられます。大切なことは「構造を理解し,異常に気づく,発見できる点検」です。乗用車には車検があるように,建設機械には特定自主検査がありますが,大部分の種類の建設機械は1年に1回(不整地運搬車は2年に1回)の実施です。検査を実施したときには不具合が進み,既に手遅れの状態になっていることも珍しくありません。現在は,多くのメーカーの建設機械で,車両に発生した油圧系統の異常や電気系統の異常について,運転席周辺のモニターにエラー表示がされるようになっています。しかし,油量不足や油漏れ,グリース給脂状態,ブレーキの効き具合,消耗部品の摩耗状

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