九州職業能力開発大学校 谷畑 伸一郎九州職業能力開発大学校(以下,九州能開大という)の居住系の能力開発セミナー(以下,セミナーという)の実施率は,施設内において低調な位置にある。しかし,九州能開大居住系は,施工管理に関するセミナーニーズが高いという特徴を持ち,その要因としては事業主団体と連携した取り組みが背景にある。本稿では団体ニーズ把握,日程調整,レディ・オーダーメードコースの振り分けなどの取り組みについて報告する。建築業界における職種は,川上側の設計(意匠・構造・設備)と川下側の施工・施工管理に大別できる。ここでは就業人口の多い川下側の施工・施工管理について述べる。2.1 業務の体制居住系セミナーが対象としている建築業界は,製造業と異なる特徴が受注生産(一品生産)であることである。建築主がいて,設計者,施工管理者,施工技能者,工事監理者といった多くの企業・職種により構成され,特に施工現場においては重層下請構造により成り立つプロジェクトである。物件ごと(一棟ごと)に施工され,同じ建物は二つと存在しない。地盤が異なれば地耐力も異なり構造は異なり,前面道路など敷地環境が異なれば重機-13-の設置位置により施工法も異なるからである。さらに,施工する上では,天候の影響(雨・風・気温)が直結し,安全対策・品質維持の観点で現場を停止させることもある。近隣への配慮(音・振動対策)も必要であり,配慮したうえでも近隣からのクレーム対応にも追われることもある。勤務体制は,近隣対策だけでなく働き方改革も加わり,日・祝日の休暇はかなり定着してきたが,それでも現場の不測の事態により職種によっては休日であっても現場を動かすこともある。したがって,建設業は他業種よりも現場環境に左右される要素が強く,つまり不測の対応要素が多いといえる。人材育成の観点ではセミナー受講を予定していても現場状況によっては急なキャンセルの理由の一つもここにある。「そもそも数か月先のセミナー時に現場がどういう状況なのかがわからないのだから企業とすれば受講させられるかのめどがつかない」と評されたこともある。2.2 業界ニーズ建設業界は,資格社会といわれる。施工管理側・専門工事業者ともに資格の有無により担当できる仕事の範囲・規模は異なる。主な資格は以下の通りである。・施工管理者:施工管理技士,建築士など・ 専門工事業:作業主任者資格・技能講習資格などの主に安全系資格これらはセミナーニーズ調査で顕著に表れる(資格対策セミナーが求められる)。当居住系では,民間研修機関との競合を避けた技術セミナーを企画している。1.はじめに2.建設業界について〜建築業界における事業主団体との連携について〜在職者訓練の受講者増の試み
元のページ ../index.html#15