図1 用語の相互の関係職業能力開発総合大学校 研修課 佐野 豊1995年に「辞書からみた「技術」と「技能」雑感」(「技能と技術」誌1995年1号a) 須藤 秀樹氏)(以下[雑感])が掲載されており,興味深く拝見させていただいた。[雑感]は,「技術」「技能」「技」そして「熟練」の四語を20種の辞書から「最もわかりやすく一般的で,納得できる説明」を検討したもので,特に「技術」「技能」について両者の説明に含まれる「ワザ」を媒介に「技術」を「ワザの表現」,「技能」を「ワザの実行」という2つのコトでそれぞれの説明として結論づけている。(図1)この辞書からアプローチするところが面白く,同じ方法で,ただし少しずれた位置からアプローチしたら,何かしら別な側面が見えるか考えてみることにした。-18-元々「技術」と「技能」には,「雑感」の結論にあるような,明瞭な区分けを可能にする「違い」があったのだろうか。あったとすれば,それは何か。本稿では「技術」と「技能」二語を比較し,その疑問を明らかにしたい。さて,[雑感]では国語辞典,漢和辞典,百科事典とかなりの幅の辞書を動員している。本稿では幅から離れ,時間に着目し,その語の深部(元の了解)にどのような意味があったのかを考え,「技術」と「技能」の違いを探ることとした。使用する辞書と使う順序は,語源辞典b)を入り口に古語辞典c),時代ごとの辞典,そして「明治のことば辞典d)(東京堂出版)」という流れになっている。なぜ最後に明治のことば辞典を使うのかであるが,西洋からの情報が集中した明治期に,意味・用法が変わった語,新語,もしくは翻訳語,が多数現れた。これらの語の中から明治時代の語を濾し出すフィルターとして,明治のことば辞典を使っている。また,語の説明(意味)は時とともに移ろうものなので,語源辞典の説明を,基底として考えることにする。1.はじめに2.狙いは「技術」と「技能」二語の違い3.少しずれた位置から続・辞書からみた「技術」と「技能」
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