2023年4号「技能と技術」誌 314号
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職業能力開発総合大学校 職業訓練コーディネートユニット 原 圭吾職業訓練指導員において企業支援を実施することは重要なミッションの一つです。そのため本シリーズにおいては「ヒト・モノ・カネ」という経営資源の3要素を捉え,職業訓練指導員に必要なポイントを簡潔に説明しています。2回目は「モノ」を取り上げ,皆さまと一緒に学びたいと思います。特に,企業支援を実行する立場として「モノ」を確認したいと思います。またDX,SDGs,イノベーションとの関係についても確認していきます。企業において「モノ」と言えば,製品の質や収益,顧客満足度などに直結する重要な要素です。「モノ」の中でも在庫の管理は,企業の業績に大きな影響を与えます。在庫が少なすぎると,販売機会を逃したり,製造ラインが停止したりする可能性があります。また在庫が多すぎると,保管費用がかさみ,最終的には利益が損なわれることもあります。一方,機械装置などの各種設備を活用する「ヒト」の動きは,製品の品質を決定づける重要な要素です。したがって,「モノ」だけで企業業績が決まるわけではありません。また「モノ」には設備投資など,ハードウェアに関する事項も含まれます。これらは経営計画や財務状況,景気動向などに基づいて実行されることが多く,皆さまが,それらを直接助-22-言する場面はほとんどないと思います。しかし,企業の「モノ」に対する考え方や思いについて,皆さま自身が理解することは,今後,企業支援を円滑に進めるためにも重要なことだと考えられます。まず初めにDX(デジタルトランスフォーメーション)と「モノ」の関係について考えたいと思います。製造業では,AIやIoT技術を活用し,既存システムの効率化や生産管理の高度化,新たな価値創造など,DX化への流れが急速に起こっています。企業がこのような取り組みを進める理由は大きく2つの理由があります。①守りのDX:既存システムの最適化・機械装置の高度化,最適化・保守メンテナンスの予測・システム全体の運用管理②攻めのDX:新たな製品,サービスの創出・新分野への展開・サービスやプラットフォーム全体の提供・新たな価値提供一方,McKinsey & Company「2030日本デジタル改革」1)によれば,デジタル人材の不足などを要因として,日本と最先端デジタル大国(米国,シン1.はじめに2.経営資源としてのモノとは3.DXと「モノ」の関係「ヒト・モノ・カネ」の基礎と実践講義2「モノ」についての重要性職業訓練指導員のための

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