ガポール,デンマークなど)との間には,大きな乖離が生じているとされています。また世界におけるデジタル競争力ランキングも下降傾向であることが示されています(日本は2022年デジタル競争力ランキング世界29位である2))。このような状況にある中で,企業はDX化を「モノ」と高度に結びつけることが喫緊の課題となっています。そのために必要なこととして,デジタル技術を効果的に導入することや,人材育成を進めることが求められています。そのために職業訓練が有する「ものづくりスキル」と「デジタル技術」を掛け合わせていくことが,今後ますます重要になると思われます。次にSDGsと「モノ」の関係について考えてみたいと思います。SDGsについては,既に多くの皆さまはご存じのことだと思います。ここで改めて簡単に説明すると,SDGsは2015年9月に開催された国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかに組み込まれた国際目標のことを指します。SDGsは17のゴールから設定されています。その中で特に,製造業の視点から見た重要なゴールには,7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに8:働きがいも経済成長も9:産業と技術革新の基盤をつくろう12:つくる責任つかう責任13:気候変動に具体的な対策をの項目です。製造業は生産活動に伴い膨大なエネルギーを消費します。また環境汚染の要因とされる化学物質や,気候変動の要因とされるCO2などが排出されます。企業の社会的責任が強く問われる時代の中,このような現状に目を向けない企業は,一般消費者からも無責任な企業として認知されかねません。そのために,企業がSDGsの目標に向けて具体的な行動を起こすことは,生産活動に伴う問題が解-23-決されるだけでなく,企業自身の,社会的信用の向上につながります。そのためには,先ほど解説したDX化の推進はもちろんのこと,業務プロセスの見直しや効率化を進めることが重要となります。またデジタル技術を導入したスマートファクトリーの実現なども解決策の一つとしてあげられます。その他,3R(Reduce, Reuse, Recycle)の推進なども重要となります。そのために企業支援の最前線に立つ職業訓練指導員は,今後ますます重要な役割を果たすことができると考えられます。すなわち,個々の職業訓練指導員が有する専門的スキルやノウハウに加え,指導員間のネットワークなどを効果的に活用することで,企業が有する課題解決の糸口を的確に示すことができると思われます。次にイノベーションと「モノ」の関係について見てみたいと思います。製造業に限らず企業が成長していくためには,イノベーションは欠かすことのできない重要な要素です。そもそもイノベーションとはモノの仕組みやサービス,ビジネスモデルなどに新たな視点や技術を取り入れ,新しい価値を生み出すことを意味しています。ヨーゼフ・シュンペーターによると,次の5つをイノベーションとして取り上げています。①プロダクト・イノベーション②プロセス・イノベーション③マーケット・イノベーション④サプライチェーン・イノベーション⑤オーガニゼーション・イノベーションイノベーションは企業の収益拡大はもちろんのこと,企業課題の解決や,市場開拓,競争力確保などのために重要となっています。そのような中,近年はイノベーション活動にデザイン思考が導入されるようになり,大きな成果を上げる事例が増えるようになりました。特にGAFAMといった世界のIT市4.SDGsと「モノ」の関係5.イノベーションと「モノ」の関係
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