2023年4号「技能と技術」誌 314号
26/42

参考資料場を独占する巨大企業群は,既存の企業では太刀打ちできないほどのスピード感や組織力を有するようになりました。このような背景のもと,今わが国の企業に求められていることは,イノベーションの重要性を理解し,早急にイノベーションの実現に向けて行動を起こすことにあります。その際に重要となるのが「デザイン思考」なのです。もともとデザイン思考とは,建築家や芸術家などのデザイナーが新たな価値を創造する際の活動を指していました。このデザイン思考をもとに企業が変革を起こすためには次の5つのステップがあるとされています。①共感:相手の立場になりきる。②問題定義:本音を発見する。③創造:問題解決のアイデアを出す。④プロトタイプ:イメージ,共有できるものを作る。⑤テスト:フィードバックを受ける。このポイントは顧客自身も気が付いていない潜在ニーズを起点に課題の再定義を行い,その課題をダイレクトに解決できるような解決策を探索することにあります。このアプローチ方法は,人としての本源的欲求を有しないAIでは実現不可能なことです。そのためにも人間が中心となり,共感力をもとにして,課題を見つけることが重要になります。職業訓練に振り返ってみると,一部の訓練を除いて,これまでイノベーションを学ぶ場面は少なかったと思います。またデザイン思考についてはほとんど扱われていなかったと思います。しかしこれまで説明してきたように,企業では,自社の生き残りをかけ,イノベーションは重要な要素の一つとなってきています。特にDX時代においては,自社の収益確保のためにもイノベーションを積極的に進めていくことは必須となっています。そのため,職業訓練においても,個々の職業訓練指導員がイノベーションのステップやデザイン思考のプロセスについて理解することが,今後求められてくると思います。-24-1) McKinsey & Company「2030日本デジタル改革 デジタル競争力と生産性を向上させるための大胆な一手」, 2021.02,https://www.digitaljapan2030.com/jp(2023.09.25アクセス)International Institute for Management Development World Digital Competitiveness Ranking 2022https://www.imd.org/centers/wcc/world-competitiveness-center/rankings/world-digital-competitiveness-ranking/2) (2023.09.25アクセス)2回目では企業の経営資源である「モノ」に焦点をあて,DX,SDGs,イノベーションとの関係について学びました。次回は「カネ」に焦点をあて講義を進めます。今回の内容をオンデマンド動画で公開しております。ご興味のある方は,下記のQRコードまたはURLからアクセスしてください。URL  https://eqm.page.link/vum36.講義のまとめ7.講義動画の公開

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る