職業能力開発総合大学校 キャリア形成支援ユニット 新目 真紀2018年度末にジョブ・カード講習等の実施に係る事業(以下,「ジョブ・カード講習等事業」という。)が終了した事に伴い,2019年度よりジョブ・カード作成支援を実施する者に職業訓練指導員免許保有者が追加された。ジョブ・カードとは,「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールであり,個人のキャリアアップや,多様な人材の円滑な就職等を促進するため,労働市場インフラとして,キャリアコンサルティング等の個人への相談支援の際に,求職活動,職業能力開発などの場面において幅広く活用するものである。2008年に新卒で正規の職に就くことが難しかった就職氷河期世代の雇用対策として開始されたジョブ・カード制度は,2015年に「新ジョブ・カード」として多様な人材の生涯を通じたキャリア支援ツールへと生まれ代わり,2022年10月からは,ジョブ・カードのデジタル化に向けた新たな取り組みとして「マイジョブ・カード」サイトが公開された。本報告では,職業訓練指導員がジョブ・カード作成支援を行う意義と,具体的な支援方法を紹介する。産業構造や技術の変化による訓練対象職種の多様化,求められる基礎能力や学歴の高度化,労働市場のグローバル化の流れに伴い,産業・企業の求める-25-人材が高度化し,それに適応できない労働者が大量に発生する恐れがあることが指摘されている[1]。良好な雇用機会を得ることのできないフリーター等の若年労働者や再就職の難しい失業者事業,技術あるいは仕事内容の変化に適応できない在職労働者は,概して良好な職業訓練機会に恵まれないことが多いことから,こうした労働者が失業を回避できるような能力を育成する職業訓練が重要になる。労働市場の変化を踏まえ厚生労働省は,2022年に「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」[2]を公表した。そこには基本的な考え方として「デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速化など,企業・労働者を取り巻く環境が急速かつ広範に変化するとともに,労働者の職業人生の長期化も同時に進行する中で,労働者の学び・学び直し(リスキリング,リカレント学習)の必要性が高まっている」ことと「変化の時代にあって,労働者一人ひとりが新たな付加価値を生み出す「主体」であり,企業・労働者双方の持続的成長に向けて,企業主導型の職業訓練の強化を図るとともに,労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進することが重要である」との記載がなされており,人生100年時代に多様な人材が,マルチステージを生きる前提においては,「社会人の学び直し」のニーズに即した訓練と支援が必要になることが指摘されている。リスキリングに関する取り組みでは,職場で新たに必要となるスキルの教育訓練メニューと,訓練生の個別性を考慮した支援体制の整備が進んでいる。職業訓練指導員は、訓練対象者が成人であることを1.はじめに2.ジョブ・カードの活用意義ジョブ・カードの活用と進め方前編 段階的支援の活用
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