図1 送り手と受け手の関係表2 傾聴の4段階熟練者にとっては,専門的すぎて理解ができなかったり,対応すべき深さと広さを段階的に広げているのが一貫性のない指示に見えたりする。一方で,指導員側においても,知識を移転しても報いられないことに対する憤りなどから,モチベーションを失ってしまう場合もある。訓練生のモチベーション,吸収能力,忍耐力,基礎スキルを勘案した信頼関係が必要となる。信頼関係を築くこととは両者の心に「橋を架ける」ことであり,互いに安心して相手を受け入れる関係を構築する必要がある。信頼関係を構築するために必要になるのが傾聴力である。働く現場では,キャリアオーナーシップやキャリア自律といったキャリア形成に対する主体性がより強く求められるようになっている。環境の変化が早く,企業や組織内における自らの意味・価値を見失いやすい状況であることから,企業や組織で働く人たちが,何らかの理由により,そこにとどまって働き続ける意味を見失ったり,何のために働くのかという価値観が揺れ動いたりした際に,別の視点から働く意味を見いだす支援は今後ますます重要になる。傾聴力は信頼関係の構築だけでなく,新しい視点の獲得の支援においても必要となる。カウンセリングの基礎を確立したRogersは,傾聴の基本は共感することであり,他者が見るように見ることと述べている。共に喜び,共に悲しむと同時に,脚色せずにありのままの現実を受け入れる冷静さも必要である。つまり勝手に自分の経験と同一視したり,話を増幅したり,解釈して自己の感じたいように感じることではない。問題の原因を追究し-27-ながら,聴いている人は大事なポイントを聴き落としていることが多い。その原因の多くは,聴いている話の内容よりも,自分の考えに気持ちが向き,心が忙しくなるので,人の話が聴こえなくなるからである。分析の対象として聴くのではなく,共にその場にいるという感覚を大切にする。ジョブ・カードには,様式1:キャリア・プランシート,様式2:職務経歴シート,様式3」職業能力証明の3つの様式が含まれている。様式1のキャリア・プランシートの記入欄には①価値観,興味,関心事項等 ②強み等 ③将来取り組みたい仕事や働き方等 ④これから取り組むこと等がある。就転職に必要となる職務経歴書には志望動機を記載するのが一般的であるのに対し,ジョブ・カードでは5.ジョブ・カード作成支援に必要な傾聴力6.キャリア・プラン作成支援の意義
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