図2 訓練プロセスに沿った多段階の支援〈参考文献〉キャリア・プランシートを書くことを推奨する。また,ジョブ・カード作成のためのガイドラインでも,まず様式2の職務経歴書や様式3の職業能力証明シートで持っている免許や,資格,学習歴,訓練歴を記入してから様式1のキャリア・プランシートを記入することが推奨されている。それは,変化が激しい現代こそ自身のキャリアビジョンを持つための支援が求められているからである。現在の社会経済環境が極めて予測困難な状況に直面しているという認識を表す言葉にVUCAワールドという言葉がある。Volatility(変動),Uncertainty(不確実),Complexity(複雑),Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語である。社会状況の変化が激しく,予測の困難さが増していることは明白である。現代のキャリア支援の特徴は,外部から与えられる行動規範が減少する中で,生きるよりどころとなる自分の望む価値を,自分自身で見いだす支援を行う点にある。リンダグラットンは『ライフ・シフト』の中で,従来のような教育・仕事・老後という単線型の人生から,退職後に再び教育を受けて複数のキャリアを経験するなど,複線型のライフスタイルへ移行する人が多数になると予想している。キャリア支援では,自己理解ができているのか,仕事理解ができているのか,どうなりたいのかを,旅人に例えて,今どこにいるのか,どこに行きたいのか、地図はあるのか尋ねることがある。冬の寒い日に,地図もなく一人でとぼとぼとさまよい,交差点で迷った挙げ句に進んだ道が間違いであったと気づき引き返さなければならないとなると,目的地に着くことを断念し,その場にしゃがみこみたくさえなる。それでも一歩前に進むためには,心の通じ合った伴走者が欠かせない。伴走者と話せばいいアイデアが浮かぶかもしれない。ジョブ・カード作成支援のプロセスは広範で複雑なプロセスであり,1対1で実施することもあれば,グループで実施することもある。グループで実施する場合は「自己理解の仕方」「求人票の見方」「応募-28-[1] 労働政策研究・研修機構(JILPT):資料シリーズ No.57 欧米諸国における公共職業訓練制度と実態―仏・独・英・米4カ国比較調査―,2009.[2] 厚生労働省:職場における学び・学び直し促進ガイドライン,2022.[3] 原圭吾[編著] 技能科学によるおのづくり現場の技能・技術伝承,日科技連,2019.[4] 渡部昌平[編著]グループ・キャリア・カウンセリング,金子書房,2018.書類の書き方」「面接の仕方」といったテーマを用いて,自己理解や職業理解に関する偏りを広げる点が特徴となる。グループワークは,指導案の作成と同様に3段階(導入,展開,まとめ)+4活動(動機付け,提示,適用,評価)で構成する講義型とファシリテーション型がある[4]。マイ・ジョブカードサイトには,グループワークで利用できる補助シートや支援ツールも多数公開されている。職業訓練では,長い期間(3カ月~2年)仲間と過ごすことで,自分ができることややりたいことがわかり,今後の見通しも見えてくる。関連する仕事で必要となる業務を体験することにより,向き不向きもわかるようになる。訓練の一環として企業見学等があり,志望する企業や職業の理解が深まる。職業訓練とキャリア支援の親和性は高い。ジョブ・カードを利用した支援では,多段階に渡って振り返りをする事が推奨されている。職業訓練指導員が,ジョブ・カードを活用して,訓練生の気持ちの整理をし,キャリア・プランを明確にする支援をすることは今後ますます重要になるであろう。7.ジョブ・カード作成支援方法8.まとめ
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