図2 型板と入れ子図3 適切な流動速度入れ子① 成形の際にプラスチックが流れる部分には良質な鋼材を用い,加工面の品質を向上し,硬く摩耗を防ぐなど寿命延長を図りたい。ただし,金型全体を良質な鋼材とするとコストがかかるので,別部品とした。② 加工が失敗した際の被害を,部分的に抑えたい。などがあげられる。プラスチックは,「製品の形をした隙間」を流れる。また,流れやすい方に優先的に流れる。つまり,製品の厚み(以降「板厚」と呼ぶ。図1)が流路の広さになり,厚い部分に優先的に流れることになる。理想を言えば,金型で成形する製品の板厚は,均一なことが望ましい。それは以下の理由による。① プラスチックの流速(以降「流動速度」と記す)は,速すぎても遅すぎても不良の原因となる。板厚が不均一だと,流動速度も不均一となり,製品全体で不良が発生しない速度を探すことが難しくなる。② プラスチックは,金型に熱を奪われて固まる。またプラスチックに対して,鋼材の熱伝導率は大きい。よって板厚が厚い部分の中央は熱の逃げが悪く,製品全体でプラスチックが固まる時間にばらつきが生じる。また,固まる際にはプラスチックが収縮する。固まる時間のばらつきは製品内部の圧力のばらつき-15-を生み,さらに圧力のばらつきは収縮のばらつきを生む。収縮の量が場所によって異なると,製品にはゆがみや反りが発生し,金型が図面通りでも製品が図面通りにはならない。4.1 3層で流れるそれでは,プラスチックが金型内を流れるとき,どのような状態になるのだろうか。金型に接触した部分はすぐに固まるため,固まった層の内側が流動層となり,計3層の状態となる。(図3右端を参照)流れの先端はどうなのだろうか。これは条件によって異なる。(参考書などを見ると諸説あるようだ。)これらを説明する前に,提示したいことは「可塑化したプラスチックは流れが悪い」ということである。今までイメージしやすいように「溶けた」と表現してきたが,正確には「可塑化した」である。つまり水のようにサラサラでなく,ホットケーキのたねのようにドロドロでもなく,粘土のような状態なのである。そのため少しでも流れが良くなるよう,高温および高圧で金型の中に押し込む必要がある。4.2 適切な流動速度(図3)金型に触れた部分から固化が始まり,固化層の厚みは時間とともに増える。プラスチックの流れは悪いため,流れの先端では風船を膨らますように広がり金型に押し付けられる。この状態を繰り返しながら,末端に向かって流れていく。プラスチックは流れが悪いのだが,そのおかげで金型に密着し,金型の面が正確に転写されると,私は考えている。3.プラスチックの流れ(1)4.プラスチックの流れ(2)
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