2024年1号「技能と技術」誌315号
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図17 目の部分のカエリ図18模様の拡大また足の部分を加工する際に,入れ子を立ててMCにて加工を行った。(図16)製品部分の加工は,ほとんどが矢印A側から加工を行っている。ただし足の部分のみ,矢印B側から加工を行っている。これだと足の裏側には抜き勾配が付かないが,製品の冷却時に金型から離れる方向で収縮するため,問題ないと判断した。(図15白矢印)また足の部分の可動側にはリブがあるため,型開き工程で問題が発生した場合は,可動側のリブ(図15)に若干のアンダーカットを設ければ対応できると判断した。7.1 抜き勾配目の部分の抜き勾配を訓練生に提案したが,厚みが薄いので0°でも大丈夫と彼らは判断した。しかし,図17に示すように,若干のカエリが発生している。その後,2°のエンドミルで追加工を行ったが,直らなかった。成形収縮の影響と思われ,特に製品の中央側(目の下側)のカエリがひどい。対策としては,ラジアスエンドミルなどを使用し,角Rを付けた製品形状に変更する必要があると思われる。また目の根元側にもR付けが必要と思われる。7.2 滑り止め付近の模様製品の足部分には,スマホが滑らないように凸の線を3本付加している。この両脇に模様が発生し,困っていた。はっきりとした模様ではなく,光に反射すると製品の表面にうっすらと浮かび上がる模様である。(図18矢印)考えられる原因は,以下の2つのどちらかであろうと推測した。-19-①  今回ヒンジの関係で板厚を変更したため,流動速度が一定にならない。そのため他の部分にプラスチックが流れこむことで,この場所では流動速度が遅くなりフローマークが発生した。②  凸の線を付加したことで,部分的に板厚が厚くなり,その関係で流動速度が速まり,ジェッティングが発生した。プラスチックの流量を変更し,図8から流速を確認しようとしたが,不良の模様が小さすぎてよくわからなかった。仕方がないので図8の形状から,模様が発生している部分の射出速度を極端に上げ下げすることで,模様の変化を確認した。その結果,射出速度を下げることにより解決したため,模様は②のジェッティング(の一種)であることが判明した。(流動速度と射出速度はイコールではないが,比例の関係にある。射出速度を上げれば流動速度も上がり,逆も同様である。)私が転勤して初めて担当したのが,16期生であった。彼らが,いくつものデザイン候補を作成し,その中から今回のカエルを選択していた。その他のことも含め,よりよいものを作ろうとする情熱に驚いたことを覚えている。またその後,いくつかの製品を作成したが,このスマホスタンドは広報などでとても人気がある製品のひとつである。最後に,当時の実践CAD/CAM技術科講師の皆さま(鈴木先生,津嶋先生)および訓練生に,感謝申し上げます。7.成形時に不具合が発生した点8.あとがき

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