図1 キャリア形成の6ステップ職業能力開発総合大学校 キャリア形成支援ユニット 新目 真紀ジョブ・カードとは,「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールであり,個人のキャリアアップや多様な人材の円滑な就職等を促進するため,キャリアコンサルティング等の個人への相談支援の際に,求職活動,職業能力開発などさまざまな場面において,労働市場インフラとして幅広く活用するものである[1]。ジョブ・カード作成支援のプロセスはキャリア形成の基本ステップに基づいており,1対1で実施することもあれば,グループで実施することもある。「自己理解の仕方」「求人票の見方」「応募書類の書き方」「面接の仕方」といったテーマを設定し,知識や理解を深める指導(ティーチング)をすることもあれば,新しい視点を獲得できるように支援(コーチング,カウンセリング)することもある。知らなくてできないことにはティーチングが有効であるが,知っていても主体的,自律的にできないことなどにはコーチングやカウンセリングといった支援が必要となる。本報告では,職業訓練指導員がジョブ・カード作成を支援する上で必要となるキャリア支援をティーチング・コーチング・カウンセリングの使い分けという観点で紹介する。職業訓練は,長い期間(3カ月~2年)にわたり訓練生と接するため,訓練生が就職までの流れを理-23-解し,見通しを持って取り組めるように支援する必要がある。そのために最初に必要となることは,職業訓練指導員が就職支援のためのプロセスを理解し,訓練期間に合った支援プログラムを計画する事ができるようになることである。キャリア支援の基本プロセスを図1に示す。6ステップからなり,各ステップで実施する支援は次の通りである。①自己理解:キャリア形成に関して「自分自身」を理解する支援,②仕事理解:キャリア・ルートの種類と内容を理解する支援,③啓発的経験:意思決定を行う前の体験をする支援,④意思決定:選択肢の考え方や選択方法を理解する支援,⑤方策の実行:意思決定したことを実現するために実施することをリスト化したり,実施するための方法を探索したりする支援,⑥仕事への適応:志望動機や志望職種に向けて貢献できることの整理。キャリア支援ではこれらを段階的に実施する。各段階の理解の程度や達成度合いは訓練生個々に差があるので,必要に応じてティーチング・コーチング・カウンセリングを使い分け,訓練期間中に主体的,自律的にキャリアプランが立てられるように支援する。1.はじめに2.ジョブ・カードの活用方法後編 ティーチング・コーチング・カウンセリングの使い分けジョブ・カードの活用と進め方
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