2024年1号「技能と技術」誌315号
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図2 訓練プロセスに沿った多段階の支援図3 マイ・ジョブカードサイト訓練期間に即して既に策定された支援計画がある場合でも,活動が時代と共にそぐわなくなっている可能性もあることから,内容を定期的に点検することも必要である。本稿では,ジョブ・カードを活用したキャリア支援を3段階で実施することを推奨している(図2)。すなわち1段階目は,訓練を受けるようになり,他の訓練生や指導員と信頼関係を構築していく段階である。2段階目は訓練に慣れ,徐々に職業理解を深め,自身ができることややりたいことを言語化することができるようになり,今後のキャリアプランを明確化していく段階である。3段階目は,具体的な企業や求人票を見て志望動機を明確化していく時期である。訓練生の多くは,人生の転機の中で職業訓練に参加する。キャリアの選択に迫られたあげく自分は失敗したと思い込んでいる可能性もあるし,長い間勤めていた会社が倒産して選択の余地がなく訓練に参加している可能性もある。家庭の事情等で転居し,見ず知らずの土地に来たばかりかもしれない。そして,自分の進むべき道がわからず,孤独と不安にさいなまれているかもしれない。キャリア開発は生涯を通じて行われる継続的なプロセスであり,またそうした孤独や不安は転機に際して誰もが抱くものであることを踏まえ,最初からティーチングモードに入るのではなく,まずは心理的に安全安心な場を作り,訓練生を受容し,共感し,信頼関係を構築する必要がある。訓練生は,支援者との間でうまく信頼-24-関係を築けないと,次のステップに進むのが難しくなることに留意する必要がある。初期段階では,多くの訓練生が,未来や将来の状態について考え,その将来の状態に居る自分を予測することが難しいと感じている。また描いた未来や将来と現状とのギャップが大きいため,そこに到達するために,現在何をすべきか冷静に把握できず,実際に取り組むことが難しくなり,落胆している可能性もある。この段階ではジョブ・カードに書かれている内容を傾聴するカウンセリングが重要となる。詳細は前編を参照いただきたい。次の段階においては,職業訓練を通して自分のキャリアを管理するために必要な情報を徐々に取得し,理解し,行動できるようになるための支援が求められる。ここではティーチングが必要となる。訓練期間に即して既に策定された支援計画を示すだけでなく,その意義を紹介することが望まれる。この段階では,自己理解の支援方法や職業情報の検索方法の紹介が有効となる。例えば自己理解については2022年10月に公開された「マイジョブ・カード」サイト(図3)を活用する方法がある。マイジョブ・カードには自己理解を促進するための自己診断が用意されている。訓練に関連する職業や職種に関する理解を促すために,厚生労働省が2020年に開設し,2022年にリニューアルオープンした職業情報提供サイト(愛称:job tag(じょぶたぐ))を使った職業情報の利用方法を指導するのは効果的である(図4)。訓練で取得する技能や,資格に関連する職業や作業(タス3.初期段階の支援4.自己理解,職業理解の方法を知る

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