表2 意思決定スタイル8分類ていくのかといった社会的な要素や経済的な要素,地域社会の要素等が影響する。さまざまな要素をバランスよく考慮する必要がある。合理的なキャリア選択では,職業的な役割だけではなく,その他の人生的な役割も考慮したうえでの支援が必要である。家族と過ごす時間を増やしたいという要望があるかもしれないし,親が高齢になったときに面倒を見たいという要望を持っているかもしれない。そうした要望はその人の自己概念(アイデンティティー)の一部であり,自分の自己概念と周囲の世界とのバランスが非常に重要になることを忘れてはいけない。自分の能力を生かせる,または貢献ができる職業を選ぶかもしれないし,やりたいことというより,給料が一番いいからという理由で選ぶかもしれない。一方,無意識に選択した場合は,本来訓練生が大切にしている家族や,地域社会に対する価値観が置き去りにされている可能性もある。訓練生が志望動機を明確化し,そのために行うことの優先順位をつけるために,情報を整理する必要がある。選択肢を挙げて,譲れない項目や重視する項目,それ程こだわらない項目を整理する。図5は意思決定支援の手順をまとめたものである。クルンボルツ博士は,人の意思決定スタイルを8分類している[3](表2)。訓練生が意思決定方法を知らなければティーチングが必要になるし,キャリアビジョンが不明確であればカウンセリング,コーチングが必要となる。この段階の支援では,これまで記入 したジョブ・カードを見ながら,やりたいこと(Will),できること(Can),譲れないこと(Must)の重なりが大きくなるような意思決定支援が有効である(図6)。図5 ジェラッドの連続的意思決定モデル[3]-26-ジョブ・カードを活用した支援では,多段階に渡って振り返りをする事が推奨されている。図6右下枠はキャリアビジョンを明確化する際に起きる4つの阻害要因をまとめたものである。本稿で紹介した3段階に応じてティーチング,コーチング,カウンセリングを使い分けることは,訓練生の就職に対する納得感を引き出すのみならず,将来にわたりキャリアリテラシー[4]を高めることにつながる。訓練生の阻害要因を踏まえた支援は今後ますます重要になるであろう。術伝承,日科技連,2019.[3] 労働政策研究・研修機構[編](2016)新時代のキャリアコンサルティング―キャリア理論・カウンセリング理論の現在と未来[4] ナンシー・アーサー,ロベルタ・ノート,メアリー・マクマホン[編](2021)現場で使えるキャリア理論とモデル:実践アイデア 選択章訳図6 キャリアビジョン明確時の阻害要因[4]〈参考文献〉[1] 厚生労働省:ジョブ・カード制度[2] 原圭吾[編著]技能科学によるおのづくり現場の技能・技7.まとめ
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