2024年1号「技能と技術」誌315号
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図1 実習の全体像山形県立産業技術短期大学校庄内校 芝田  浩近年,多くの情報システムや情報機器にAIや機械学習を利用した機能の適用が進みつつあり,その機能の社会的なニーズや重要性が増している。しかし,これらの技術に関する初学者や学生がAIや機械学習を学ぶ際には,基礎的な数学や情報の知識が必要となり,科目の全体像を簡単に理解することは難しい。そこで本研究では,学生に対する実習や,オープンキャンパス等で,初学者が機械学習プログラミングを学習する際の入門として,学習モデルの構築手順の概要をイメージしやすくなるような教材とすることを目的に,クラウドサービスの利用とWebカメラを用いた機械学習プログラミング教材を開発した。本教材を利用することにより,処理手順やシステムの全体像を理解しやすくし,学習意欲や興味を引く助けとなることを目指した。そのため,本システムでは,機械学習が利用される典型的な題材として,視覚的に興味を引く画像処理による顔検出と個人判別のプロセスを教材の中心に据えた。さらに本教材は,クラウドサービスを活用することで,実習環境の整備と準備・セットアップ作業をできる限り容易にし,作業の省力化に配慮した。2.1 全体像と各処理本教材における,処理手順の全体像を図1に示す。本教材で実現する実習内容としては,Webカ-1-メラより取得した映像から顔画像を検出し,その顔が学習済みの人物であるかを判別するまでの処理を学習する。この処理を①学習データの取得,②取得した学習データの確認,③学習モデルの作成,④学習モデルを使用した個人判別の大きく4つに分けて構成してあり,順次実施することで機能を実現している。次節より各処理内容を示す。プログラミング言語としてはPythonを使用した。さらに,本教材では,初学者への適用を目的とするため,機械学習の最も基本的な内容である教師あり学習を対象とした。画像処理の部分については,基本的にOpenCVを使用した。OpenCVは,画像処理を行う膨大な関数を用意したライブラリである。OpenCVを利用することにより,数行のコードを記述するだけで,簡単に画像処理プログラムを実現できる。2.2 学習データの取得本処理では,機械学習させるための学習データをWebカメラの画像データ(図2)から抽出する。顔の抽出にはOpenCVカスケード分類器として正面の顔を検出する“haarcascade_frontalface_default.1.はじめに2.実習の全体像と処理手順クラウドサービスの利用とWebカメラを用いた機械学習プログラミング教材の開発

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