2024年1号「技能と技術」誌315号
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図1 大学生のリーダーシップ行動の因子図2 学生が制作したペーパータワーなされている。本稿では,大学生を対象にしたリーダーシップに関する能力について調査した論文を紹介する。木村4)は大学生のリーダーシップに関する調査を行った結果,「率先垂範」「挑戦」「目標共有」「目標管理」「成果志向支援」「対人志向支援」の6つのリーダーシップ行動の傾向があったと報告している(図1)。「率先垂範」とはチームの先頭にたって積極的に行動し,他のメンバーに対して模範を示す行動である。チームの目標達成につながる課題がある場合,率先して自分自身が取り組む行動のことである。「挑戦」とは困難や成長に対する行動である。チームの目標達成につながる課題において困難な状況が生じた場合でも,少しでも良い結果につながるよう自分自身が取り組む行動のことである。「目標共有」とは,チームの目標を魅力的に伝え,他のメンバーの行動を鼓舞する行動である。チーム内で目指すべき目標を他のメンバーに伝えたり,目標の意義をメンバーに理解してもらえるように伝えたりする行動である。「目標管理」とは,チームで設定した目標や計画立案,進捗管理に関する行動である。チーム内で設定した目標に対してどのような進捗か,メンバーに負担が偏っていないか調整していく行動である。「成果志向支援」とはチームのパフォーマンス向上やメンバーの成長につながる行動のことである。チームのメンバーが作業を進めやすいように環境を整えたり,声掛けを通じてメンバーのスキルを発揮しやすくしたりする行動である。「対人志向支援」とはチームの維持に向けたメンバー間の人間関係づくりにつながる行動である。チームのメンバーに対して気を配ったり,メンバーのためになる-28-ことを優先したりする行動である。このリーダーシップ行動は質問紙になっており,大学生においてどのような行動がリーダーシップ行動に該当するのか指針としても活用することができる。また,自分自身の強みや弱みを判断する指針としても活用することができる。では,これらのリーダーシップ行動を授業の中でどのように習得していけばいいだろうか。大学生を対象にしたリーダーシップ教育では,リーダーシップに関する理論や講義を受講するだけでなく,学部学科での学びと関連する現実的な社会課題をテーマにしたプロジェクトに取り組み,プロジェクトを通じてリーダーシップ行動のスキルを習得する事例が報告されている。ただ,プロジェクトに取り組む授業では,授業内容やカリキュラムによっては1年~複数年を通じて実践する場合もある。このようなプロジェクトを取り入れたリーダーシップ教育を導入するには,既存科目の統廃合が必要となり導入に至らない可能性がある。そこで,筆者は既存のカリキュラムに転移可能な90分で導入できるペーパータワー活用したリーダーシップ育成のワークショップを学生と一緒に開発してきた。

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