2024年1号「技能と技術」誌315号
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図3 ワークショップの手順リーダーシップ行動の習得につながるペーパータワーを活用したワークショップの受講者は職業能力開発総合大学校の2年生や3年生が受講する授業である。同一の専攻だけで実施する授業科目ではなく,機械専攻,電気専攻,電子情報専攻,建築専攻に所属する学生が混在する授業である。3回実施し,受講者の合計は151名であった。ペーパータワー(図2)とは,A4用紙を折り曲げたりして作成するもので,本実践ではA4用紙以外の道具(例:ハサミやノリ)を利用せず,10分間の間にできるだけ高く積み上げるという制作のルールとした。このペーパータワーの制作を中心とするワークショップ形式の授業を実施した。ワークショップの全体像を図3に記す。本校の授業時間は100分であり,出席の確認,ワークショップのチーム分け,前回次回の授業内容の確認が10分程度必要なため90分をワークショップの時間とした。最初にリーダーシップの講義・チーム内の自己紹介である。講義においては,リーダーとリーダーシップの違い,リーダーシップ行動を参照しながらサークル活動やアルバイト先でどのようなリーダーシップが発揮できるのか事例を交えて解説を行う。講義において重要なメッセージはサークルやバイトといった他者と協力して活動する場面において,励ましや声掛けといった何気ない行動がリーダーシップの行動として捉えることができるということだ。この何気ない活動をリーダーシップ行動として捉え直すことができれば,講義としての意義がある。また,ワークショップを実施した授業では,さまざまな専攻が受講する科目であり,ペーパータワーの制作をスムーズに行うために自己紹介と「自分の好きな動物」「自分の出身地の自慢」などをテーマにして1人1分チーム内で話をしてもらう。筆者が担当している授業ではチームごとに自己紹介や課題を行う際に,譲り合いの精神が顕在化し,誰から発話をするのか戸惑う場合がある。そこで,教員から「教員に一番近い座席に座っている人から時計回りで」と-29-指示をすると,スムーズに発言が行われることが多い。自己紹介を終えた後に,ペーパータワーの制作ルールを解説する。次に,ペーパータワーの制作1回目を実施する。10分間の間にどのような形式でペーパータワーを制作するのかチームごとに議論を行い,ペーパータワーの制作を行う。ペーパータワーの高さは10分経過した後に,高さを測定するまで形を維持していることが条件である。ペーパータワーの計測までにペーパータワーが崩れた場合は,自立している部分を計測することとした。チームによっては,ペーパータワーの設計図を作成したり,役割分担をしたり,どのような折り方の形式がいいか複数のパターンを比較検討したりする。ペーパータワーの制作1回目終了後に,ペーパータワーの制作1回目に対する相互フィードバックを行う。チームの内でペアを作り,ペーパータワーを制作する過程において,どのようなリーダーシップ行動をしていたのか,コメントをし合う。他者の行動をリーダーシップ行動と照らし合わせてコメントするというのは,学生によっては難しいと判断し,フィードバックを支援する目的で,コメントシートを用意している。このコメントシートにおいては,「どのようにペーパータワーを折っていくのか積極3.ペーパータワーを活用したワークショップの実践

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