[強制連関法]
「強制連関法(フォースド・リレーションシップ)」とは、アメリカのチャールズ・ホワイティングが考え出したもので、一見、関連のない二つのものを強制的に関連づけていきながら、アイディアを生み出していくテクニックです。
たとえば、ある事務機器メーカーが新製品を開発しようとする場合を考えてみましょう。第一段階として、身近なところにある物を思いつくままに列挙して、次のようなリストを作ります。
・ 机
・ 椅子
・ 卓上スタンド
・ 書類戸棚
・ ブック・ケースなど
次に、これらの中で一つを取り上げて、ほかのものと一つずつ関連づけをしながら、アイディアを出していきます。たとえば、机と椅子、机と卓上スタンド、机と書類戸棚、などのように関連づけをして、次のようなアイディアを生み出していきます。
・ 椅子を回転式にする
・ 椅子を机に付属させる
・ はめ込み式の卓上スタンド
・ プッシュ・ボタン式卓上スタンドなど
[焦点法]
「焦点法(フォーカスド・オブジェクト・テクニック)」も強制連関法の一種であり、関連のない二つのものを強制的に関連づけていく点では同じですが、進め方がもう少し系統的で複雑です。
たとえば、「新しい椅子」を考案しようとするとき、椅子とはまったく関係のない任意のもの、たとえば「電球」を選び出して、この電球と椅子とを関連づけて、そこから新しいアイディアを生み出していこうとするものです。
その際、まず初めに、電球とは何かについて、その特性を列挙してみます。
・ ガラス製
・ 薄い
・ 球状
・ らせん式のネジ
・ 電気を使うなど
次に、それぞれの特性とテーマである椅子とを関連づけて、そこからヒントを得てアイディアをうみだしていきます。
・ ガラス製の椅子
・ 薄型の椅子
・ 球状の椅子
・ らせん式差し込みの椅子
・ 電気操作の椅子など
もし、これで満足のいくアイディアが得られないときは、「電球」の代わりに、まったく別の任意のもの、たとえば「花」を選び出して、これと椅子とを強制的に関連づけて、アイディアを出していきます。
・ 花模様のデザイン
・ 花の香りを出す椅子
・ 茎と葉をあしらった脚の椅子
・ 庭園用の椅子など
このようにして満足のいくアイディアが得られるまで、何回でも対象を取り替えて、同じことをくりかえして最終回答の焦点にたどりつきます。
[アナロジー技法]
アナロジーとは、類推のことであり、すでに知っている知識を応用して、似たような新しい事柄について、「多分そうではないか」と推しはかることです。Aがこうであるから、似たような条件を備えたBも、多分そうであろう、と推量することです。
この類推の原理がアイディアの発想に役立ちます。何か新しい未知の問題に直面したとき、すでに知っている類似の事柄と関連づけて類推すると、ヒントが得られやすく、アイディアが生まれやすくなります。
つまり、ある問題(テーマ)について、アイディアを考えていくときは、そのテーマと似たような物や事柄を思い浮かべて、そこからヒントを借りてくる方法です。
たとえば、次のような要領です。
・ 水上スキーから水中翼船
・ 竹トンボからヘリコプター
・ ツルの首からパワーショベル
・ バラの花ビラからウェディング・ドレス
・ 人体の心臓からポンプなど
[等価変換法]
創造性開発の技法の一つで、異なる二つのもの(たとえばAとB)の間に等価的なもの(共通点や類似点)を見つけ出し、それを手がかりに思考の流れをAからBへ変換させることによって、飛躍的なアイデアの発想を得ようとするものです。
たとえば、「クモの巣」と「小売店」とは、一見、何の関係もありませんが、クモの巣と小売店との共通点や類似点など等価的なものを考えながら、クモの巣の特性をあげてみると、次のようなことが考えられます。
- 獲物が向こうから来るのを待つ。
- 立地によって収獲が左右される。
- エサが大きすぎても小さすぎてもいけない。
- ときどき張り替えが必要である。
このようなクモの巣の特性の中から、小売店の経営に役立つヒントをつかんでいこうとするものです。このやり方は、わが国に昔から伝わる「なぞなぞ」によく似ています。「ケチなダンナとかけて、春の夕日と解く。その心は、クレソウデクレナイ」とか、「破れ障子とかけて、ウグイスと解く。その心は、ハルヲマツ」などの例でも、一見、関連のない二つの事柄の間に等価的なものを見つけて、思考の変換を行なっているわけです。
ところで、このような発想の仕方を電気工学者の市川亀久弥氏は次のような数式で表現しました。
Aο Bτ
この数式で、Aο(Aオミクロン)とは、変換する前の元の現象のこと(例、クモの巣、ケチなダンナ)、Bτ(Bタウ)とは、変換された事象のこと(例、小売店経営、春の夕日)、Cε(Cイプシロン)とは、式の両側を結びつけることを可能にする等価的な次元のこと(例、獲物が向こうから来るのを待つ、クレソウデクレナイ)を表わします。
このような等価変換の思考法に慣れておくと、柔軟な発想を誘発しやすくなるというわけです。 |