教材名 TIG溶接技能クリニック実技シート
教材名2
教材ID 133
教材作成者名 大藪 千治
教材作成日 1996-08-01
改訂情報
ジャンル名 普通教材
分野名 機械系
業種名 プラスチック製品製造業
職務名 溶接
職務構成名 TIG溶接応用
区分名 教材
職業名 機械技術者
 指導案


イ.使用機材・資材一覧
 ・テキスト 自作テキスト(補助教材も含む)

  表 題 「TIG溶接技能クリニック実技シート」
  著 者 大藪 千治(千葉職業能力開発促進センター)

  表 題 「TIG溶接法と最近のTIG溶接機」
  著 者 大藪 千治(千葉職業能力開発促進センター)

  表 題 「ステンレス鋼と溶接の問題点」
  著 者 大藪 千治(千葉職業能力開発促進センター)

  表 題 「アルミニウム(合金)と溶接の問題点」
  著 者 大藪 千治(千葉職業能力開発促進センター)

  表 題 「TIG溶接による溶接欠陥とその防止対策について」
  著 者 大藪 千治(千葉職業能力開発促進センター)

  ・資 材(ステンレス鋼:SUS304、アルミニウム(合金):A1100P-OあるいはA5052P-O)

課 題 板厚×幅×長さ 受講生1人あたりの支給枚数 備    考
1      
2 2×100×100 3×100×150 1枚ずつ
3 2×100×150、3×100×150
4 3×30×150 20枚
5 3×150×150 2枚
6 3×30×150 20枚
7 3×30×150 20枚
8 3×30×150 10枚 アルミニウム(合金)のみ
9 3×65×150 20枚 ステンレス鋼は開先加工
10 3×30×150 10枚
3×50×150 10枚

(注1)課題はステンレス鋼コース、アルミニウム(合金)コースともに共通である。例えば、課題4ではそれぞれ20枚ずつ使用することになる。
(注2)
課題1 TIG溶接機の取り扱い  
課題2 アークの発生とアークスポットの作成
課題3 母材の溶かし方(メルトランビード)
課題4 メルトラン(なめ付けあるいは共付け溶接)によるへり溶接
課題5 ビードオンプレート
課題6 溶接棒を使ったへり溶接
課題7 下向きすみ肉溶接
課題8 TIGパルス溶接〔アルミニウム(合金)の下向きすみ肉溶接〕
課題9 下向き突合せ溶接
課題10 水平すみ肉溶接
(注3)上記に示す寸法に切断しておく
(注4)板材(1000×2000)から上記寸法に切り出すが、練習材の幅が小寸なため受講生にひずみ取りをするよう指示する。
・溶接棒 ステンレス鋼:Y308(φ1.6、φ2.0)
アルミニウム(合金):A1100-BYあるいはA5183-BY:φ1.6、φ2.4、φ3.2
・アセトン
・ウエス 
・タングステン電極 ランタナ入りタングステン電極:φ2.4
(受講生分) セリア入りタングステン電極:φ2.4
純タングステン電極:φ2.4
・アルゴンガス

ロ.訓練事前準備項目
1.テキスト(5冊)を受講生分用意する。 「TIG溶接技能クリニック実技シート」
 「TIG溶接法と最近のTIG溶接機」
 「ステンレス鋼と溶接の問題点」
 「アルミニウム(合金)と溶接の問題点」
 「TIG溶接による溶接欠陥とその防止対策について」
2.TIG溶接機の作動状況、アルゴンガスの残量を確認する。
3.溶接用保護面(ハンドシールド、ヘルメット)の受講生分の用意と遮光プレートの確認をする。
溶接中の観察力は個人差があるので、No.10、11、12の3種類を準備しておくが、場合によっては-9が必要な場合がある。

ハ.訓練項目と訓練経過時間

【1日目】
午前 「TIG溶接法と最近のTIG溶接機」
●ステンレス鋼
課題1「TIG溶接機の取り扱い」
課題2「アークの発生とアークスポットの作成」
課題3「母材の溶かし方」
午後 課題4「メルトランによるへり溶接」
課題5「ビードオンプレート」
課題6「溶接棒を使ったへり溶接」

【2 日目】
午前 「ステンレス鋼と溶接の問題点」
課題7「下向きすみ肉溶接」
「TIG溶接による溶接欠陥とその防止対策について」
午後 ●アルミニウム(合金)
課題3「母材の溶かし方」
課題4「メルトランによるへり溶接」
課題5「ビードオンプレート」

【3 日目】
午前 「アルミニウム(合金)と溶接の問題点」
課題8「下向きすみ肉溶接のTIGパルス溶接」
午後 ●ステンレス鋼 ●アルミニウム(合金)
課題9「下向き突合せ溶接」

【4 日目】
午前 課題9「下向き突合せ溶接」
●ステンレス鋼 ●アルミニウム(合金)
課題10「水平すみ肉溶接」
午後 ●ステンレス鋼 ●アルミニウム(合金)
課題10「水平すみ肉溶接」定


ニ.指導展開法
●受講生に対しては提示、集団指導、個別指導を怠らないこと

【1日目】
9:00 「TIG溶接法と最近のTIG溶接機」
セミナーの概要をフローチャートを使って説明。各受講生に問診票を記入してもらう。
9:10 「TIG溶接法と最近のTIG溶接機」(補助教材)について説明。
従来は、トリア入りタングステン電極や純タングステン電極を使用していたが、トリア入りタングステン電極は放射性物質ということから、ランタナ入りやセリア入りといった最近のタングステン電極について強調する。
10:10 教室から実習場までの移動を考慮して、休憩(コーヒーブレーク)。
10:25 ブレーカのーの位置、「TIG溶接機の取り扱い」(サイリスタ制御方式とインバータ制御方式の溶接機全面パネルのつまみの機能のちがいについて説明)、アルゴンガスの流量調整について説明。また、作業終了時のガス抜きについても同時に説明する。つぎに、ランタナ入りタングステン電極を使用し、タングステン電極の研削について両頭グラインダーによる方法とタングステン電極研磨機による方法を説明。特電極の先端角度の溶接における影響や研削の際には薄皮手袋は必ずとって作業をすることを強調し、今後とも注意する体制で臨むこと。
トーチにタングステン電極の取り付けを説明し、特にノズル(ハイアンカップ)からの突き出し長さを長くしすぎないことも強調する。
トーチからタングステン電極を抜き差しする場合、高周波電圧による感電・やけどの危険性があるので、その際にはTIG溶接機の電源スイッチを切るように。
10:55 溶接材料はステンレス鋼(SUS304)を使用する。ノズルの置き方、電極-母材間距離の保持の仕方、タングステン電極を決して母材に接触しないでアークを発生する(いわゆるノンタッチスタート)ことを提示・説明する。
「アークスポットの作成」では、アーク長を2~4mmに保持すること、板厚に応じた溶接電流の設定値と溶融池(プール)の大きさをつくることを説明する。
また、アークを切ったあと、アルゴンガスのアフターフローを十分に生かすこと。
11:25 ステンレス鋼(SUS304)を使って、「母材の溶かし方」を提示・説明。
・溶接のスタートは、後戻り法(バックステップ)で。
・溶接電流を変化させて、母材の溶け方~表側および裏側について~を十分観察すること
・アーク長を一定にすることに心がけること
・トーチはできるだけ立て、前進溶接であること
・前進溶接・後進溶接のちがい、特徴について説明
・一般にト-チを手前に傾けやすく、トーチの偏りをチェック
12:00 休憩・昼食
13:00 ステンレス鋼(SUS304)を使って、「メルトラン(共付け溶接あるいはなめ付け溶接)でへり溶接」を提示・説明する。
・一定のアーク長を保持すること
・プールの広がりは母材のへり部(エッジ)まででよく、広がりすぎないこと
・トーチ角度、特にトーチの手前側への偏りに注意
・手前のエッジはよく見えるが、向こう側のエッジは見にくいから溶接進行方向からのぞき込むようにして、溶接を進める
・終端部でアークを切ったあと、アルゴンガスのアフターフローを十分に生かすこと
・溶接ビードのワイヤブラッシングも忘れないように
14:00 トーチ操作、アーク長の保持が慣れてきたら、いよいよ溶接棒(溶加棒)を使った「ビードオンプレート(ビード置きの練習)」を提示・説明する。練習材(母材)はステンレス鋼(SUS304)である。
・溶接棒の種類、溶接棒径、母材との組合せについて
・一定なプールの大きさをつくる
・溶接棒を送り込むプールの位置
・溶接棒の操作角度
・リズミカルな運棒操作
・プール表面のふくらみおよび沈み(凹み)の状態の観察
・クレータ処理の方法(TIG溶接機のスリーインワン方式も説明)
・溶接棒は1mもあり、他の受講生の眼をつく心配もあり、クリッパーで半分に切らせてもよい
・また、溶接棒の端部をペンチ等で丸く曲げておくと眼をつく心配がなくなり、受講生に勧めること
・溶接ビードのアルゴンガスによるシールド状態を観察後、ワイヤブラッシングして溶接ビードの幅、波形、余盛の高さ、練習材(母材)の裏面への溶け込み(裏ビードの形成状態)を観察する
・特に、余盛ができずに母材表面より低くなったビードが往々にしてできやすいから、その原因について討議するのもよいし、その対策もアドバイスすればよい
溶接電流値の大小
溶接速度の大小
溶接棒の添加量など
15:00 休憩(コーヒーブレーク)
15:15 「溶接棒を使った、へり溶接」の提示・説明に入る。練習材はステンレス鋼(SUS304)である。
・溶接棒のサイズがワンサイズ細くなる
・溶接棒の手送りのコツを説明する
・溶接部のスタート、エンドの処理のしかた
15:50 今日行ったステンレス鋼のそれぞれの課題について自己診断シートに記入してもらい、提出。
16:00 第一日目終了
受講生が帰ったあと、各人の自己診断シートと課題のできばえをみてアドバイスをする内容を検討。


【2日目】
9:00
9:00 昨日の自己診断シートから各受講者に対してアドバイスを行う。ただし、あまりにも個人的要素に関するものは個別指導で行う。
質疑応答。
9:10 「ステンレス鋼と溶接の問題点」について説明する。
・ステンレス鋼の分類、種類、規格
・ステンレス鋼の性質、特に耐食性について
・ステンレス鋼の溶接施工上の問題点
・TIG溶接を中心としたステンレス鋼溶接材料の選び方
異材継手の溶接についても説明したいが、時間的にきびしい感がある。
10:10 ステンレス鋼(SUS304)を練習材にして、「下向きすみ肉溶接」の提示・説明をする。
・1層目は、メルトラン(共付け溶接)で溶け落ちの心配もあり、トーチと溶接棒を持ちながら溶接をする。
・アーク長、トーチの操作角度をチェック
・両エッジの幅はへり継手の場合より狭いので、アーク長が長すぎるとどうしてもエッジを溶かしすぎてしまう。
・2層目は溶接棒を使うが、余盛が高くなりすぎないこと
・スタート、エンド部をチェック
11:10 休憩(コーヒブレーク)
11:25 「TIG溶接による溶接欠陥とその防止対策について」を説明。
12:00 休憩・昼食
13:00 ここで、溶接材料をアルミニウム(合金)に切り替える。
「母材の溶かし方」について、要領はステンレス鋼の場合と同じ。ただし、次のことを強調する。
・交流TIG溶接に切り替える
・インバータ制御方式ではモード切り替え機能を使ってみる
・クリーニング範囲調整つまみも操作してみる
・タングステン電極の種類をかえてみる(純タングステン電極あるいはセリア入りタングステン電極)
・繰り返し練習すると、母材が過熱して溶けやすくなるので、適宜水冷する。ウェスで十分水気を取っておく。
・溶接の後半は早く進む
14:00 ルミニウム(合金)の「メルトランによるへり溶接」
・2枚の板のすき間に注意する
15:00 休憩(コーヒーブレーク)
15:15 アルミニウム(合金)の「ビードオンプレート」の練習
・溶接ビードの波形はステンレス鋼溶接の場合に比べ粗く、間欠的ビードである
・あまり小刻みな溶接棒の送り込み(添加)はしない
・スタート、エンド部をチェック
15:50 今日行ったステンレス鋼・アルミニウム(合金)のそれぞれの課題について自己診断シートに記入してもらい、提出。
16:00 第2日目終了


【3日目】
9:00 昨日の自己診断シートから各受講者に対してアドバイスを行う。ただし、あまりにも個人的要素に関するものは個別指導で行う。
質疑応答。
9:10 「アルミニウム(合金)と溶接の問題点」について説明
・アルミニウム(合金)の分類、種類、性質
・アルミニウム(合金)の溶接施工上の問題点
・TIG溶接を中心としたアルミニウム(合金)用溶接材料の選び方
特にクリーニング作用が起こる理由について強調。
10:10 休憩(コーヒーブレーク)
10:25 アルミニウム(合金)の「溶接棒を使ったへり溶接」の練習を行う。
溶接の要領はステンレス鋼の場合と同じ。
11:25 アルミニウム(合金)の「下向きすみ肉溶接」
ステンレス鋼の場合と違って、溶けやすくし損じが多いので「TIGパルス溶接」を説明する。
・その目的
・パルス電流、ベース電流
・低周波パルスの採用
・感覚的TIGパルス溶接
12:00 休憩・昼食
13:00 ステンレス鋼の「下向き突合せ溶接」を説明する。
・裏波溶接とバックシールドの必要性
・バックシールド装置の取り扱い
・2層溶接で仕上げるが、どうしても2層目が低く仕上がってしまう場合の対策
15:00 休憩(コーヒーブレーク)
15:15 アルミニウム(合金)の「下向き突合せ溶接」を説明する。
・アルミニウム(合金)用の平やすりの使い方
・クリーニング作用のとどく範囲(特に裏面)
・バックシールドの可否
15:50 今日行ったそれぞれの課題について自己診断シートに記入してもらい、提出。
16:00 第3日目終了


【3日目】
9:00 昨日の自己診断シートから各受講者に対してアドバイスを行う。ただし、あまりにも個人的要素に関するものは個別指導で行う。
質疑応答。
9:10 昨日のアルミニウム(合金)の「下向き突合せ溶接」を続ける。
10:10 休憩(コーヒーブレーク)
10:25 ステンレス鋼とアルミニウム(合金)を使って、溶接の中ではもっとも多い「水平すみ肉溶接」を説明。
・T継手と重ね継手
・アルミニウム(合金)の場合はステンレス鋼の場合と違って、ルート部の溶け込み不良(従来ブリッジと呼んでいた)ができやすく至難の技である
・溶融プール内に溶接棒を送り込む(添加する)位置
12:00 休憩・昼食
13:00 引き続き「水平すみ肉溶接」を練習する。
14:30 休憩(コーヒーブレーク)
14:45 引き続き「水平すみ肉溶接」を練習する。
15:30 自己診断シートをもとに質疑応答
16:00 セミナー終了

※上記以外の資料(「教材」と「実技関連説明書」など)は、 こちら(ユーザ名=ユーザIDとパスワードが必要です)。
ユーザ名とは会員登録時に発行されたユーザIDを指します。
ユーザ名とパスワードをお持ちでない方は教材作成支援情報メニュー一覧から会員登録を行って下さい。